妊活中はえびを食べるべし!理由を管理栄養士が徹底解説!
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妊活中は食べ物にも気を遣いますよね。えびを食べて大丈夫か不安になる人もいるかもしれません。実は、えびは妊活中の体づくりに役立つ栄養素が多く含まれ、東洋医学の面からも妊活をサポートすることが知られている食材です。えびの栄養素と働きを知り、妊活中の食事に取り入れてみましょう。
妊活中にとりたい!えびの栄養
えびには、妊活中の体づくりに役立つさまざまな栄養素が含まれています。また、えびは水銀の含有量が低く、厚生労働省が発表した妊娠中に控える必要がある魚介類のリストに含まれていません。1)
妊活中からえびを取り入れた食生活を始めておくことは、妊娠前の体づくりだけでなく、妊娠中の食事にも役立つでしょう。
えびには多くの種類がありますが、スーパーなどで出回っているのは主にブラックタイガーやバナメイエビです。2)
ここでは、えびの代表としてブラックタイガーの栄養価を紹介します。
カロリー
えび100gあたりのカロリーは77kcalです。魚介類の中でもカロリーが低く、特に脂質が0.1gと少ないのが特徴です。3)
そのため、えびは体重を減らしたい人にもおすすめできます。脂質は1gあたり9kcalと栄養素の中で最もカロリーが高いため、脂質を控えることで食事のカロリーを効率よく減らせます。
たんぱく質
たんぱく質は筋肉だけでなく、内臓や骨、髪の毛や爪など、体を作る主な成分です。体の働きを助けるホルモンや酵素、抗体などもたんぱく質でできています。
- 卵子
- 精子
- 胎児の体
- 胎盤
もたんぱく質を材料として作られます。
1日の摂取量の目安は、成人男性では1日65g、成人女性では50g以上です。4)毎食、肉や魚、卵や大豆製品などのたんぱく質源を手のひらと同じくらいの大きさ分とるのがおすすめです。
えびに含まれるたんぱく質は、100gあたり15.2gです。100gはえび約5匹分に相当します。
カルシウム
カルシウムは骨や歯を作り、体を支えている栄養素です。また、出血の予防や筋肉の収縮にも関わっています。
カルシウムが不足すると、血液中のカルシウム濃度を保つため、骨に含まれるカルシウムを溶かして血液中に供給します。そのため骨の強度や密度が弱くなり、骨粗鬆症の原因となります。5)
特に妊娠・授乳期はカルシウムの需要が高まり、骨密度が低下しやすい時期です。妊娠中に骨が弱くなると、産後に腰痛を引き起こす場合もあります6)。妊娠前からカルシウムを十分にとり、丈夫な骨を作っておくことが大切です。
日本人の食事摂取基準(2020年版)4)で定められた1日の推奨量は、
- 18~29歳男性で800mg
- 30~74歳男性で750mg
- 18~74歳女性で650mg
です。しかし2019年の調査では、実際の摂取量の平均値は成人男性で503mg、成人女性で494mgでした。特に20代女性では408mg、30代女性では406mgと、より不足している傾向がみられました。7)
えびに含まれるカルシウムは、100gあたり67mgです。殻ごと食べるさくらえびでは含量が多く、100gあたり2000mg含まれます。3)大さじ1杯(5g)でも100mgのカルシウムがとれるため、スープやサラダなどの料理にトッピングするとカルシウムの摂取量を手軽に増やせます。
タウリン
アミノ酸に似た物質で、魚の血合い、貝類、イカ、タコなどに多く含まれています。医薬部外品の栄養ドリンクに配合されていることでも有名な成分です。
人間の体には体重の0.1%のタウリンが含まれているといわれ、
- 心臓
- 筋肉
- 肝臓
- 脳
- 網膜
に存在し臓器の働きを助けています。特に
- 肝機能の改善
- 心臓病の予防
- 抗炎症作用
などが期待され注目を浴びています。
出産後は母乳にも多く含まれ、乳児の発達に関わっています。9)
アスタキサンチン
アスタキサンチンとは、えびやかにの殻、鮭の身に含まれる赤い色素成分です。抗酸化作用を持ち、体内の活性酸素を取り除く働きがあります。
ストレスなどで活性酸素が大量に生成されると、動脈硬化や老化、免疫力の低下などを引き起こします。10)
アスタキサンチンは活性酸素を取り除き、コレステロールの酸化を抑制するkとで動脈硬化を予防する効果が期待されています。糖尿病の合併症改善、筋肉の疲労回復などに役立つ可能性も示されています。9)
東洋医学からみるえびの効果
妊活力を高める「腎」
東洋医学では、体の働きを
- 肝
- 心
- 脾
- 肺
- 腎
の五臓に分けて考えます。西洋医学でいう「肝臓」「心臓」などの臓器とは字が同じですが、示している範囲は異なり、自律神経などまで含めた広い働きを指しています。
この5つの中で、特に妊活において重要なのが「腎」です。西洋医学の「腎臓」は尿を作り、水分やミネラルのバランスの調整が主な働きですが、東洋医学の「腎」は成長、発育、生殖も司っています。
腎の力が弱まると、精力が低下する、根気がなくなる、骨や歯がもろくなるなどの症状につながると考えられています。不妊にも影響するとされていることから、妊活中は腎の働きを強めることが大切です。11)
えびは腎を補う
腎を補うのは、鹹味(塩辛味)という性質を持つ食材です。えびも鹹味の食材で、腎を補う働きがあります。その他にも甘味、温性という性質があり、冷えの改善や滋養強壮に役立つとされています。12)
えび以外にも、昆布やのり、しょうゆやみそなども鹹味の食材です。12)また、黒い食材も腎を補う働きがあるといわれています。黒ごま、黒豆、黒きくらげなどを合わせてとるとよいでしょう。13)
えびをおいしく食べるコツ
新鮮なえびの選び方
新鮮なえびは、殻が硬く、鮮やかな色をしています。水揚げされてから時間が経つと、黒く変色します。発色を見て、新鮮なものを選びましょう。また、鮮度が落ちると生臭くなるため、においがないかも確認するとよいでしょう。
冷凍えびの活用もおすすめ
下ごしらえが面倒な時は冷凍えびも活用しましょう。えびの種類や、殻つきのもの、むきえびなど、さまざまなものがあります。作りたい料理に合わせて選ぶとよいでしょう。
冷凍えびは、解凍してから料理に使用しましょう。そのまま使うと内側に火が通るまで時間がかかり過ぎてしまいます。
最もおすすめの解凍方法は、冷蔵庫での自然解凍です。一度に使う分の冷凍えびを、バットや皿に取り出し、ラップをかけて冷蔵庫に移して解凍しましょう。時間はかかりますが、ドリップが出にくいため味を保ちやすいのが特徴です。
急いで解凍したいときは、塩水につけましょう。水に対して3%(水200mlに小さじ1)の食塩を溶かし、保存袋から取り出した冷凍えびをつけておきます。真水ではえびの水分とうま味が流れ出てしまいますが、塩水につけることでおいしさとぷりぷりした食感が保てます。
おいしく食べるための下ごしらえの方法
殻つきのえびは、殻と背ワタを取ってから使います。むきえびでは背ワタがとってある場合もありますが、残っていたら取りましょう。背ワタはえびの腸にあたる部分なので、そのままだと生臭さが残ってしまいます。
背を丸めた状態で、竹串などを刺して引き抜くように取り除きます。尾から2~3節目に竹串を入れるととりやすいでしょう。
その後、濃い目の水溶き片栗粉を揉みこむと、表面の汚れや生臭さがとれます。片栗粉がのり状になるくらい、少量の水で作るのがポイントです。
生で食べるときは鮮度に注意! 😯
寿司や刺身など、えびを生で食べるのもおいしい食べ方です。ただし、妊活中から妊娠中は、生でえびを食べる場合は注意が必要です。
えびに限らず、生ものには食中毒のリスクがあります。細菌やウイルス、寄生虫によって発症し、発熱、嘔吐、下痢などの症状を招きます。
妊娠時に特に気をつけたい食中毒菌は「リステリア菌」です。
健康な成人では、大量のリステリア菌を摂取しない限り食中毒は起こらず、発症しても軽症で自然に治るとされています。ただし、妊婦では少量のリステリア菌でも発症・重症化しやすく、また胎盤や胎児にも感染させる恐れがあります。14)
リステリア菌の感染が多い食べ物は、
- 生ハム
- ナチュラルチーズ
- スモークサーモン
などの加工品です。
えびでも陽性率は10%以下と高くありませんが、リステリア菌陽性のものが出回っていることが確認されています。15)
リステリア菌は、冷蔵保管中にも増殖できることが知られています。14)妊活中に生でえびを食べる場合は、生食用の新鮮なものを選び、少量摂取に留めるようにしましょう。
また冷蔵庫を過信せず、買ったらすぐに食べるのがおすすめです。最も菌が繁殖しやすい夏場は生食を控え、加熱してから食べるほうがよいでしょう。
えびを取り入れ、妊娠に向けた体づくりに役立てよう
えびはたんぱく質を豊富に含み、妊活中の体づくりに役立つ食材です。脂質が少ないことから、体重を減らしたい人にもおすすめのたんぱく質源です。また、カルシウムやタウリン、アスタキサンチンなどの成分を補うのにも役立ちます。
東洋医学の観点でも、えびは妊娠に関わる働きをサポートしてくれる食材です。えびを日々の食生活で楽しみながら、妊娠に向けた体づくりを行いましょう。
参考
1)厚生労働省「これからママになるあなたへ お魚について知っておいてほしいこと」https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/100601-1.pdf
2)農林水産省「私たちが利用しているえびの種類は、何種類ぐらいありますか。」https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0905/01.html
3)文部科学省「食品成分データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.pl
4)厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html
5)厚生労働省「e-ヘルスネット カルシウム」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-042.html
6)日高三貴ら「妊娠後骨粗鬆症により多発椎体骨折をきたした2例」整形外科と災害外科,68(4), 656-660(2019)https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai/68/4/68_656/_pdf
7)厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/r1-houkoku_00002.html
8)厚生労働省「e-ヘルスネット タウリン」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-017.html
9)中村宜督「からだにいいってホント?食品でひく機能性成分の事典」女性栄養大学出版部(2022)
10)厚生労働省「e-ヘルスネット 抗酸化物質」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-009.html
11)日本東洋医学会「漢方の診察 1-7 基本概念 五臓」http://www.jsom.or.jp/universally/examination/gozou.html
12)山崎民子,中医営養学について-Ⅱ -食物の性能-.帯広大谷短期大学紀要,33;49-60(1996) https://www.jstage.jst.go.jp/article/oojc/33/0/33_KJ00000733582/_pdf
13)公益財団法人長寿科学振興財団「健康長寿ネット 第4回 冬の養生」https://www.tyojyu.or.jp/net/essay/chuigaku-kampoyaku-kokorotokarada-genki/fuyunoyojo.html
14)厚生労働省「リステリアによる食中毒」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055260.html
15)食品安全委員会「食品中のリステリア・モノサイトゲネス」https://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc1_bi_virus_listeria_250402.pdf
三樹彩夏
小児科・内科クリニックに勤務後、2020年にフリーランスに転身。「健康的な生活を当たり前にする」をモットーに、ダイエットサポートやライター業を通して食の大切さを伝えている。