妊活中でもお酒は飲める!注意すべきポイントを解説
- 妊活
飲酒は少量であれば、妊活の結果に大きく悪影響を及ぼすとは考えられていません。ただし、過度の飲酒は妊娠に時間がかかる、不妊を引き起こすなど妊娠を妨げる可能性があります。妊活中にお酒を楽しむ場合は、飲みすぎを防ぎ、少量飲酒に留めましょう。
女性の妊娠しやすさと飲酒の関係については、さまざまな研究がされています。多くの研究によって、アルコール摂取量が多いと妊娠率が低下する傾向が示されました。一方、1日1杯以下の少量飲酒については結果が一致せず、妊娠率を下げるという報告と、不妊のリスクを改善するという報告の両方があります。
これらの結果を踏まえ、アメリカ生殖医学会が2022年に発表した声明では、妊娠を希望する女性に対して1日に20g以上のアルコール摂取を避けるよう勧めています。摂取量がそれ以下の場合は、妊娠に悪影響を及ぼす明確な証拠は得られていないとしています。1)
妊娠したら禁酒しよう
妊活中は少量であれば飲酒してもかまいませんが、妊娠したら禁酒が必要です。
飲酒の影響で胎児に起こる先天性の異常を「胎児性アルコール・スペクトラム障害」といいます。小さな目や薄い唇などの特徴的な顔つき、低体重などの発育の遅れが主な症状です。また
- 脳の異常
- 難聴
- 運動障害
- 知的障害
などの症状もみられます。大人になってから発達障害やうつ病などの問題が起こる場合もあります。2)
胎児性アルコール・スペクトラム障害には治療法がないため、禁酒によって予防することが大切です。
どのくらいなら飲んでも大丈夫かという基準は明確になっていません。また、妊娠中のどの期間であっても胎児に影響する可能性があります。妊娠に気づいた時点で禁酒を徹底しましょう。
男性の飲酒は影響する?
女性だけでなく、男性でも飲みすぎは不妊を引き起こす可能性があります。
過度なアルコール摂取は、精子の数の減少、形や運動率などの質の低下を招きます。飲酒量が多い男性では、お酒を飲まないか量が少ない男性に比べて、パートナーが妊娠するまでの期間が長かったという研究結果もあります。1)
また、過度の飲酒は勃起障害につながる可能性も指摘されています。少ない量の飲酒であれば、リラックスし勃起を引き起こすのに効果的です。しかし摂取量が多いと効果がない、または勃起障害のリスクを高めるとされています。3,4)
妊活中は男女とも飲みすぎを控え、カップルで節酒に努めましょう。
妊活中にお酒を楽しむポイント
妊活中に妊娠を妨げずにお酒を楽しむには、飲むタイミングと量に注意する必要があります。ここでは、妊活中の飲酒のポイントを5つ紹介します。
1.低温期に飲む
生理周期のうちどの時期に飲酒するかによっても、妊娠率への影響が異なると考えられています。
基礎体温をつけると、生理が始まってから排卵までの「低温期」と排卵後から生理前までの「高温期」の2相に分かれます。このうちお酒を飲むなら、低温期がおすすめです。
受精は排卵直後に行われ、着床はその6~12日後に起こることから、高温期の飲酒は特に妊娠に影響する可能性があります。この時期の飲酒は避けたほうがよいでしょう。
生理周期のタイミングごとに、飲酒量と妊娠率を調べた研究があります。その結果によると、高温期では週3~6杯(1杯=ビール約350mL相当)の飲酒で妊娠率が低下しました。一方低温期では、この飲酒量ではお酒を飲まない人と比べて妊娠率に差はみられませんでした。
このことから、特に高温期の飲酒が妊娠しやすさを妨げるといえます。
ただし、週6杯以上の飲酒ではどの時期でも妊娠率の低下がみられたことから、生理周期のタイミングに関わらず飲みすぎには注意が必要です。5)
2.寝る直前の飲酒は避ける
寝つけないからといってお酒を飲んでから寝るのは、実は眠りの質を高めるには逆効果です。
寝る前の飲酒は確かに眠気を促し、寝つきやすくするのには役立ちます。ただし、睡眠の後半では覚醒作用が上回り浅い眠りを増やすため、途中で目が覚めやすくなる、睡眠時間が短くなるなどの悪影響をもたらします。6)
寝る前の飲酒は避け、睡眠の量・質とも改善を図りましょう。
3.適量を守って飲む
お酒は適量を守って飲むことが大切です。妊活のためはもちろん、一生にわたって病気を予防し、健康な体を保つのに役立ちます。
お酒の適量は、厚生労働省の「健康日本21」7)によると「純アルコール換算で1日20g程度」であるとされています。これは、男性ではアルコールを1日に10~19g摂取すると最も死亡率が低くなることから設定された量です。
さらに女性の場合は肝臓が小さく、アルコール代謝にかかる負担も大きいため、飲酒の適量はより少ないと考えられています。女性では1日あたりアルコール9gまでの摂取で最も死亡率が低いことから、男性の半分の10g程度までを目安にするとよいでしょう。
▼純アルコール20gの目安8)
- ビール(5%):ロング缶1本(500mL)
- 日本酒(15%):1合(180mL)
- ウイスキー(40%):ダブル1杯(60mL)
- 焼酎(25度):グラス1/2杯(100mL)
- ワイン(12%):グラス2杯弱(200mL)
- チューハイ(7%):レギュラー缶1本(350mL)
ただし、体質によってはそれより少ない量が適量となる場合もあります。酔いやすさはその日の体調にも左右されることがあるため、体の変化に注意しながらお酒を楽しみましょう。
また食事をとらずに空腹状態で飲むと、胃からアルコールが素早く吸収され、悪酔いしやすくなってしまいます。また飲みすぎにもつながりやすいため、食事をとりながらゆっくり飲むよう心がけましょう。
4.身体を助けるおつまみをとる
体内に入ったアルコールは、肝臓で分解・解毒されます。その過程では、ビタミンやミネラルなどの栄養素が必要です。アルコールから肝臓を守るため、これらの栄養を補うおつまみをとれるとよいでしょう。おすすめのおつまみを3つ紹介します。
枝豆
枝豆からは、アルコールの分解に関わるビタミンB₁がとれます。また、アミノ酸の一種であるメチオニンという成分が含まれ、アルコールの分解を促進し肝機能をサポートしてくれます。妊活に欠かせない栄養素である葉酸が多いのも嬉しいポイントです。
するめ
するめにはタウリンが豊富に含まれます。いかやたこ、貝類などに多く含まれ、肝機能を高める働きが期待されています。疲労回復を目的として、栄養ドリンクにも配合されている成分です。
レバーペースト
レバーは鉄や亜鉛、ビタミンB群などの栄養素が豊富に含まれる食材です。また、アルコールの分解に関わるナイアシンも多く含まれます。
特にレバーペーストはバケットに乗せるだけでおいしく食べられるため、お酒を楽しみながら不足しがちな栄養を簡単に補うのに役立ちます。
ただし、レバー類の食べすぎはビタミンAの過剰摂取につながり、頭痛や食欲不振、筋肉痛などを引き起こします。レバー串1本分程度でも、長期間にわたって毎日食べ続けると過剰摂取となる恐れがあります。食べるのは週1回程度に留めるのがよいでしょう。9)
休肝日を設ける
お酒による体の負担を減らすため、飲酒を控える日、いわゆる「休肝日」を設けることも大切です。
週2日以上飲まない日を設けることで、飲酒の総量を減らし、肝臓を修復させるのに役立ちます。忘れないよう、取り組みやすい曜日を決めるとよいでしょう。休肝日はお酒ではなく、ノンアルコール飲料や炭酸水に置き換えて飲むのもおすすめです。
飲みすぎに注意してお酒を楽しもう
妊活中でもストレス解消やリラックスのため、お酒を楽しみたいこともあると思います。
過度の飲酒は妊活に悪影響を与える可能性がありますが、飲む量やタイミングに気をつければ飲んではいけないわけではありません。ただし妊娠後は禁酒が必要になるため、妊活中から徐々にお酒を減らしながら、適度に楽しめるとよいですね。
参考文献
1)Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine and the Practice Committee of the Society for Reproductive Endocrinology and Infertility. Optimizing natural fertility: a committee opinion. Fertil Steril. 2022, 117(1):53-63
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34815068/
2)厚生労働省「e-ヘルスネット 胎児性アルコール・スペクトラム障害」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-01-015.html
3)Alcohol intake and risk of erectile dysfunction: a dose-response meta-analysis of observational studies. Int J Impot Res.2018, 30(6):342-351.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30232467/
4)Shen Li, et al. A Meta-Analysis of Erectile Dysfunction and Alcohol Consumption. Urol Int. 2021,105(11-12):969-985.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34521090/
5)Mohammad Yaser Anwar, et al. The association between alcohol intake and fecundability during menstrual cycle phases. Hum Reprod. 2021, 36(9):2538–2548.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34102671/
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf
7)厚生労働省「健康日本21 アルコール」https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b5.html
8)厚生労働省「e-ヘルスネット 飲酒量の単位」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-02-001.html
9)食品安全委員会「ファクトシート ビタミンAの過剰摂取による影響」https://www.fsc.go.jp/sonota/factsheet-vitamin-a.pdf
三樹彩夏
小児科・内科クリニックに勤務後、2020年にフリーランスに転身。「健康的な生活を当たり前にする」をモットーに、ダイエットサポートやライター業を通して食の大切さを伝えている。