実は妊活と深い関係が!脂質について知っておきたいこと

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妊活中の食事のバランスに悩んでいませんか?

特に脂質はカロリーへの影響が大きく、気になる人も多いかもしれません。適量が分からない、質の良い油と悪い油の違いが気になるなど、さまざまな疑問や不安が生じることでしょう。

実は、脂質の摂取と妊活には深い関係があります。良質な油を適度に摂取し、悪影響を及ぼす油は控えることが大切です。この記事では、脂質の重要性やとりたい脂質の種類、食材ごとの適量を解説します。脂質の正しい知識を身につけて賢く摂取し、妊活に役立てましょう。

脂質と妊活の関係は?

適切な脂質が、妊娠を促す

脂質の適切な摂取は、男女ともに妊活に大切なことです。

脂質は炭水化物やたんぱく質と並ぶ三大栄養素のひとつで、身体にとって欠かせない栄養素です。1gあたり9kcalと炭水化物やたんぱく質の約2倍のカロリーを持つ効率的なエネルギー源です。その他、体脂肪として体温を維持する、内臓を保護する、細胞膜やホルモンの構成成分となり体の正常な働きを助けるなどの役割があります。脂溶性ビタミンと一緒に摂取することで、ビタミンの吸収率を高めることもできます。1)

妊娠に不可欠な性ホルモンも脂質を材料として作られます。また脂質からのエネルギーは、排卵や月経、妊娠を維持するためにも大切です。2)

だし、とりすぎるとカロリーオーバーになりやすく、肥満につながります。肥満は排卵障害による不妊を引き起こす可能性があるため、脂質は適切な量を摂取し、適正体重を維持できるよう心がけましょう。2)

魚で妊活に効果が!特に大事なDHA

脂質にはさまざまな種類がありますが、妊活では特にDHAが重要です。DHAは「n-3系脂肪酸」と呼ばれる脂質の一種で、魚に多く含まれています。卵子や精子の質に関わり、妊娠の可能性を高める上で重要な役割を果たす可能性が示されている栄養素です。

体外受精などの生殖補助医療(ART)を受けている女性を対象とした海外の研究では、血中のn-3系脂肪酸濃度が高いほど妊娠・出産の可能性が高くなったという報告があります。3)

また、DHAは精子の頭部にも多く含まれている成分です。精子の運動性が低い「精子無力症」に対しても、DHAが効果的である可能性が示されています。DHAサプリメントを摂取した男性不妊患者では、精子の直線運動性が改善したという研究結果もあります。4)

日頃の食生活では意識しないと肉のメニューに偏りがちですが、意識して魚のメニューを選び、DHAを取り入れましょう。

脂質摂取の適量ってどれくらい?

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、脂質の摂取目標量は食事から摂取するカロリーの割合で示されています。1日の摂取カロリーのうち、20~30%を脂質から摂取することが理想とされています。5)

例えば、成人女性で1日1600kcal必要な人では35~53g、成人男性で1日2,000kcal必要な人は45~65gが脂質の摂取目標量です。

ここからは、脂質の摂取源となる食品ごとに適量を考えてみましょう。

  • 肉・魚
  • 卵・乳製品
  • 油脂(植物油・バター・ドレッシングなど)
  • 菓子類(生クリーム・スポンジケーキ・アイスクリームなど)

肉・魚

食事の量の目安に「手ばかり法」があります。自分の手の大きさを基準にして食べる量を決める方法で、必要量の個人差に対応できる便利な方法です。

肉や魚の場合は、たんぱく質の摂取量も考慮して、1回の食事で自分の片手のひらに乗る量を目安にするとよいでしょう。

先ほど述べたように、妊活中は特にDHAの摂取が大切です。積極的に魚料理を選び、週3回程度は魚を食べるようにするのがおすすめです。

DHAを含めたn-3系脂肪酸の摂取目安量は、18~49歳の男性では2.0g、女性では1.6gとされています。 この量を魚に置き換えると、魚の種類や部位、調理方法によって異なりますが、まぐろ(トロ)の刺身5切れ(100g)、さばやぶりの切り身半分(50g)程度が目安です。6)

魚の調理が難しい場合は、刺身やツナ缶・サバ缶、スーパーやコンビニで販売されている塩焼き、魚肉ソーセージやかまぼこなどの加工品を活用すると便利です。またご飯や豆腐にしらすや小魚の佃煮を載せる、間食に小魚スナックをとるなどの工夫もよいでしょう。

肉を選ぶ際は、白い脂身が多い部分は控えめにしましょう。肉の脂肪には「飽和脂肪酸」と呼ばれる脂質が多く含まれます。飽和脂肪酸をとりすぎると血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が上昇することが知られており、生活習慣病の原因となります。7)

肉の種類や部位によっても脂質の量が大きく異なります。脂質の多い肉は、バラ、サーロイン、ひき肉などです。また日常的に使用しやすいソーセージやベーコンにも脂質が多いため注意が必要です。牛肉や豚肉で脂質が少ない部位は、ももやヒレです。鶏肉は皮に脂肪が多いものの、皮を外せばむね肉・もも肉とも他の肉と比較して低脂質です。これらの肉を取り入れて、飽和脂肪酸の摂取量を減らすことをおすすめします。

また、ひき肉を使いたいときは大豆ミートに置き換えるのもひとつの選択肢です。脂質が少ないだけでなく、常温保存が可能なのも使いやすいポイントです。

卵・乳製品

卵には1個5.2gの脂質が含まれます。特に卵黄に含まれるレシチンは、細胞膜をつくる重要な成分です。6)

また、牛乳には1杯(200mL)に7.6gの脂質が含まれています。牛乳にも肉と同様に飽和脂肪酸が含まれますが、乳製品の摂取は生活習慣病とは関係せず、むしろ牛乳やヨーグルトは予防的に働くことも示されています。8)

ただし、平均的な量を超えてとり続けた場合には、悪影響を及ぼす可能性も考えられます。

これらは身近で手軽にとれるため、バランスのとれた食生活に役立つ食品です。卵は1日1個程度、乳製品は1日1回(牛乳1杯またはヨーグルト小パック1個)を目安に、適度に取り入れましょう。

油脂(植物油・バター・ドレッシングなど)

調理に使用する油脂類は、1日大さじ1~2(植物油で12~24g)程度にするとよいでしょう。

自炊での炒める・焼く調理に使用する油を過度に気にする必要はありませんが、バターには飽和脂肪酸が含まれます。キャノーラ油や米油、オリーブオイルなど植物油を活用することで、飽和脂肪酸の摂取量を抑えることにつながります。ただしカロリーはどの油脂でも1gあたり9kcalと変わらないことには注意が必要です。

調理法によって油の使用量は異なります。少ないのは茹で、網焼き、蒸し料理です。炒め物や揚げ物では油の量は増え、料理のカロリーも上がります。

揚げ物を食べるときは、一緒に食べるサラダのドレッシングはノンオイルを選ぶ、次の日は蒸し料理にするなど、1食や1日・1週間単位で調整するのがおすすめです。

お菓子(ケーキ・アイスクリームなど)

日々の楽しみであるお菓子ですが、種類によっては脂質の量に注意が必要です。

洋菓子はバターやクリームを使用するため、和菓子に比べて脂質が多いのが特徴です。例えば大福の脂質は約0.5gですが、シュークリームは約15gと大きな差があります。チョコレートやスナック菓子にも脂質が多く含まれます。脂質の摂取量を抑えるには、1日のお菓子の量は200kcal以内を目安にし、洋菓子が続かないよう種類も調整するのがおすすめです。

アイス類は、含まれる乳固形分(脂肪分)の割合で食品表示に記載されている名称が異なります。脂肪分の少ない順に「氷菓」「ラクトアイス」「アイスミルク」「アイスクリーム」となります。日常的には氷菓やラクトアイスを選び、アイスクリームは特別な機会に楽しむのがよいでしょう。

脂質は私たちの体に欠かせない大切な栄養素です。とりすぎるとカロリー過多になりますが、控えすぎも避け「適量を摂取する」ことをぜひ心がけてみてください。

体重が肥満の数値になっている、コレステロールが高いなどの場合は、特に意識して食生活を見直してみましょう。
脂質摂取量を把握したい場合、食事記録アプリの利用が便利です。アプリの中には、食事の写真を撮影するだけで栄養素の計算をしてくれるものもあります。3日間だけでも記録をつけてみると、自分の食生活の傾向がつかめ、新しい発見があるかもしれません。

妊活のために体重コントロールを始めたい方は「妊活中に痩せたい人必見!NG行動と健康的なダイエット方法」もご覧ください。

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要注意!控えるべきあぶら

トランス脂肪酸

トランス脂肪酸は、食品中にもともと含まれている天然由来のものと、食品加工の過程で生成される工業由来のものがあります。天然由来のトランス脂肪酸は、牛肉や羊肉、乳製品などにわずかに含まれています。私たちが摂取するトランス脂肪酸のほとんどは工業由来のもので、マーガリン・ファットスプレッド・ショートニングなどの加工油脂や、それらを使用して作ったパン・ケーキ・ドーナツなどの洋菓子、揚げ物などに含まれています。

トランス脂肪酸を日常的にとりすぎた場合、心臓病のリスクを上昇させることが知られています。またトランス脂肪酸を多くとるほど、排卵障害の不妊のリスクも高まります。2)

国際機関が開催した専門家会合(食事、栄養及び慢性疾患予防に関するWHO/FAO合同専門家会合)では、トランス脂肪酸の摂取量を、エネルギー摂取量の1%よりも少なくするよう勧告しています。9)

日本人は欧米人に比べて脂質の摂取量が少なく、大多数の日本人では1%よりも少ないことから、通常の食生活ではトランス脂肪酸の影響は少ないといえます。5)

また最近では食品メーカーの加工技術の発達により、国内で販売されている商品のトランス脂肪酸量は減少していることも知られています。9)

ただしマーガリンやショートニングが使われた食品をよく食べる場合は、過剰になる可能性も否定できません。トランス脂肪酸の摂取が今より少なくなるよう、洋菓子や揚げ物を食べる量や頻度を見直してみましょう。

酸化したあぶら

油の酸化も注意したいポイントです。油が空気、光、熱に触れると酸化が進み、さまざまな有害物質が発生します。これによって油の色やにおいが悪化し、品質が劣化します。

酸化した油の特徴は、消えにくい細かい泡が発生する、調理時に不快なにおいがする、色が濃くなる、粘度が増加するなどです。
このような油を摂取すると、気分が悪くなったり胸やけを起こしたりする可能性があります。また、摂取量が多い状態が続くと体内での脂質も酸化しやすくなり、動脈硬化や認知症などの発症リスクにつながるとされています。10)

揚げ物などで同じ油を何回も使用するのは避けましょう。また調理してから時間がたっているホットスナックや惣菜の摂取は控えたほうがよいでしょう。

脂質を知って、適切に摂ろう

脂質は人の体に欠かせない栄養素で、妊活にも重要な役割を果たします。ただし過剰摂取は肥満につながる可能性があるため、適切な量を心がけましょう。

脂質の種類によっても体への影響が異なります。魚に含まれるDHAは卵子や精子の質に関わるため、積極的に摂取するのがおすすめです。一方、トランス脂肪酸の摂取はできるだけ減らすとよいでしょう。肉や魚、卵、乳製品、植物油などを取り入れたバランスの良い食生活を心がけ、適度に脂質を摂取しましょう。

1)健康長寿ネット「三大栄養素の脂質の働きと1日の摂取量」

https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/shishitsu-shibousan.html

2)ジョージ・E・チャヴァロ、ウォルター・C・ウィレット、パトリック・J・スケレット「妊娠しやすい食生活 ハーバード大学調査に基づく妊娠に近づく自然な方法」日本経済新聞出版社(2013)

3)日本脂質栄養学会「妊活に必要なオメガ3脂肪酸」

http://jsln.umin.jp/committee/omega6.html

4)日本脂質栄養学会「精子無力症に対するDHAサプリメント投与の効果」

http://jsln.umin.jp/committee/omega28.html

5) 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html

6) 文部科学省「食品成分データベース」

https://fooddb.mext.go.jp/

7) 厚生労働省「e-ヘルスネット 脂質異常症」

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-004.html

8) 一般社団法人Jミルク「牛乳・乳製品摂取と生活習慣病発症に関する最新情報」

https://www.j-milk.jp/report/study/h4ogb400000011pz-att/h4ogb400000011sc.pdf

9) 農林水産省「すぐにわかるトランス脂肪酸」

https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_wakaru/

10) 東北大学「食べた酸化脂質の行きつく先は?」

https://www.agri.tohoku.ac.jp/jp/highlights/20220926pr/

三樹彩夏
【監修】管理栄養士

三樹彩夏

小児科・内科クリニックに勤務後、2020年にフリーランスに転身。「健康的な生活を当たり前にする」をモットーに、ダイエットサポートやライター業を通して食の大切さを伝えている。

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