猫が妊娠中の私のお腹に乗ってくるのは大丈夫?妊婦と猫との過ごし方
- 妊活
大切な家族の一員であるペット。身近な人へ妊娠を報告した際に「妊娠中は飼っている猫を他で預かってもらったら?」などと言われ、心配になった方もいるかもしれません。
確かに、妊娠中の猫との過ごし方には注意すべき点があります。しかし、注意点を守って生活すれば、妊娠中であっても無理に飼い猫を手放す必要はありません。この記事では、妊娠期間に猫と一緒に過ごすための注意点と、その予防策を紹介いたします。
感染症に注意!
まず、特に注意すべき感染症は「トキソプラズマ症」です。トキソプラズマ症とは、トキソプラズマ原虫という寄生虫によって引き起こされる感染症の事をいいます。
日本人の成人の約25〜30%は既にトキソプラズマに感染しているといわれています。また、トキソプラズマ症に感染しても、健康な人であれば8割の人は無症状だといわれており、自身が知らないうちに感染している場合もあります。
トキソプラズマは一度感染すれば抗体ができます。予防ワクチンはありません。注意が必要なのは、妊娠中に初めて感染した場合です。
胎児に感染すると、先天性トキソプラズマ症になり、死産や流産の危険があります。出産することができても、赤ちゃんに視力障害や脳障害が起きてしまうこともあります。また、生まれたときには異常が発見されなくても、成長してから視力障害を引き起こす事もあります。
トキソプラズマに感染してしまったら?どう予防すれば良い?
妊娠後、トキソプラズマに初感染したことが判明した場合は薬を使い、おなかの赤ちゃんへの影響を最小限にとどめるようにします。
感染の機会として考えられるのは、感染している猫科の動物が排泄する糞便中のオーシスト(小さな虫体を含んだ卵のようなもの)を摂取した場合と、感染動物の筋肉などの組織中にいる虫体を摂取した場合です。
トキソプラズマは、ほとんどすべての温血動物に感染しますが、糞便にオーシストを排泄するのは猫科の動物だけです。
猫を飼っている方は
- 生肉や加熱が不十分な肉、未殺菌のミルクを与えない
- 野外で、感染動物(鳥類やネズミ等)に接触をさせない
- 他の猫と接触させない、新しい猫を飼わない、飼い主さんが外で野良猫と接触しない
等、トキソプラズマ感染を防ぐ対策が必要です。
また、人間への感染を防ぐためには
- 猫のトイレは毎日掃除する(オーシストが感染力をもつようになるまでには最低24時間を必要とする)
- 猫のトイレを熱湯で消毒する
等の対策が有効です。可能であれば、妊娠期間中は、同居の家族にトイレ掃除を担当してもらい、猫のトイレとの接触を避けましょう。
感染の機会は他にも考えられます。土や砂の中にも、トキソプラズマの卵が混じっている可能性があります。ガーデニングで土を触ったり、公園で土遊びをした後は、石鹸で十分に手を洗いましょう。
また、妊娠中は肉を十分に加熱して食べる事が大切です。ユッケ、馬刺し、鶏刺し、生ハム、サラミ、生乳等の飲食は、妊娠中は避けておきましょう。
事前にトキソプラズマの抗体検査はできるの?
トキソプラズマの検査は、妊娠初期の血液検査の項目に入っていることが多いです。これから妊娠を望まれる方は、妊娠前に抗体検査し、抗体があるのかを知っておく事ができると理想的です。
また、猫に感染歴があるかどうか、動物病院で検査してもらうことも可能です。ただし対応していない病院もあるので、事前に動物病院に実施できるか・費用はどのくらいかかるのか等、事前に問い合わせすることをおすすめします。
ノミ・マダニにも注意!
ノミやマダニも病気を媒介する虫です。猫用の駆除薬が出ていますので活用しましょう。口から投与する
- 錠剤
- 噴霧スプレー
- 注射薬
- 駆除薬
には複数種類があります。各メーカーで有効成分や対応している寄生虫も異なりますので、状況に応じて使い分けましょう。
マンションなど、空調が整った人間の居住空間は、虫にとっても絶好の繁殖の場です。猫の寝床や、カーペットは特に虫が好む空間ですので、定期的に室内を掃除しましょう。
また、感染症対策と同じく「野外で、感染動物(ノミ・マダニ等)に接触をさせない」事が大切です。猫が病気を持って帰ってと、母体や赤ちゃんに病気をうつしてしまう可能性があります。赤ちゃんが生まれる前からしっかりと対策をして、猫を健康な状態に保ちましょう。
猫のストレス対策
猫を飼っている方であれば既にご存知だと思いますが、猫は大きな音が苦手です。また、猫にとって「自分の縄張りを荒らされる」という事は最大のストレスです。
初めての子育ての場合、赤ちゃんのお世話に加え、猫のストレスケアまでするのは大変だと感じてしまうかもしれませんが、大切な赤ちゃんを、大切な猫に「敵認定」されないよう、飼い主さんが間に入って、ストレス対策に努める事が重要です。
猫によって、個体差がありますが、赤ちゃんの登場によって、猫に少なからずストレスが発生する事は間違いありません。赤ちゃんのお世話中は猫に対し「こっち来ちゃダメだよ」という場面が増えます。
猫からしてみれば
「そこは自分の場所だったのに!」
という気持ちですよね。
猫に
- 今は忙しいけれど、あなたの優先度は落ちていないよ
- 赤ちゃんと同じくらい、あなたの事が大切だよ
と、態度で示す事が大切です。
弟妹が産まれる際に「上の子を優先してあげて下さいね」と、保健師さん等からアドバイスを受けることがありますよね。第一子は、生まれてからずっと、親と自分だけの時間でした。しかし、下の子が生まれると、その時間は分割されてしまいます。
親としては、どの子にも同じように愛情を注いでいるつもりでも、受け止める子は「愛情が減った」と感じやすい状態に…。
その不安定になる気持ちを和らげるため「上の子を優先」が推奨されるのです。
猫同士であれば、どうしても相性が合わなさそうだと感じた場合、新しい猫の受け入れを見送るという選択肢もありますが、赤ちゃんの場合、そんな選択肢はありません。なので、より一層の猫へのストレスケアが大切になるのです。
猫が与えてくれる癒し効果
猫のゴロゴロ音には、癒しの効果があると言われています。20~50ヘルツの音は副交感神経を優位にする働きがあります。
猫のゴロゴロ音の周波数は25ヘルツの低周波であり、低周波には幸せホルモンと言われる「セロトニン」を分泌させる効果もあります。ゴロゴロ音の低くて細かい振動を伴う周波数には、人の血圧を下げたり、不安を和らげたり、ストレスをなだめたりする効果もあるそうです。
また、骨折やケガへの効果、免疫力や自然治癒を高めると言われています。
海外では、ゴロゴロ音を、治療やリラクゼーションに取り入れたセラピーも行われているそうです。妊娠中には、心配やストレスがつきもの。猫が与えてくれる癒しの効果で、リラックスしたマタニティライフを過ごしてください。
最後に
表題で投げた問いに対する解となりますが、猫が妊娠中のお腹に乗ることは一般的には危険ではありませんが、猫の体重やその動きによっては不快感や圧迫感を感じる場合があります。
妊娠中の体は通常よりも敏感なので、猫がお腹に乗ることによって何らかの不快感を感じる場合は、優しく猫を移動させるなどして対処すると良いでしょう。猫と暮らしていく上で、感染症など注意しなくてはならない点はありますが、基本的な衛生管理をしていれば過度の心配はしなくて問題ありません。
また出産後、猫と赤ちゃんが仲良く生活してくれる姿は見ていてとても嬉しいものです。一説によれば、子どもが動物と一緒に育つと自己肯定感が高く、より社会的適正のある大人に成長するとも言われています。トラブルが起きないよう注意をしながら、猫との楽しい生活を過ごしてくださいね。