妊活で最初に確認するべき、カラダのこと
- 妊活
妊娠・出産期は、身体の変化が大きい時期です。妊活を始める前に身体をチェックすることは、妊娠・出産を健やかに行うために大切なことです。なかには、妊娠中の感染によって、赤ちゃんへ大きな影響を与えてしまう病気もあります。
今回は妊活したいと思ったら最初に確認しておきたい身体に関するチェックポイントを紹介します。妊娠後の不安をなくし、妊活に臨む準備をしましょう。
まずは身体のチェックを
免疫があるかを確認しよう!母子の健康のために
感染症の中には、妊娠中の感染によって母体が重症化しやすいものや、流産や胎児の先天性疾患のリスクになるものがあります。これらはワクチンで予防できるため、妊娠前に予防接種を受け免疫(抗体)をつけておくことが大切です。
まずは抗体を持っているかどうかの検査を受け、抗体が少ない場合は予防接種を受けましょう。男性も母体への感染を防ぐため、抗体検査と予防接種を行うのがおすすめです。
抗体検査やワクチンの接種は、
- 内科
- 婦人科
- 小児科
などで受けられます。
妊娠前に免疫をつけておきたい感染症を4つ紹介します。これらのワクチンは妊娠後には受けられません。またワクチン接種後2ヶ月は避妊が推奨されるため、妊活を始める前に検査と接種を済ませておきましょう。1)
風しん(三日はしか)2,3)
一般的には症状が軽く、感染しても症状が出ないこともある病気です。ただし妊娠初期に感染すると、胎児に
- 難聴
- 白内障
- 緑内障
- 心臓の病気
などの「先天性風しん症候群」が生じるおそれがあります。
女性では過去に風しんの予防接種を受けている人がほとんどですが、男性では公的な接種制度がなかった時代があるため、1979年4月1日以前に生まれた男性は風しんの抗体を持っていない人が多いといわれています。
自治体によっては風しんの抗体検査やワクチン(風しん麻しん混合ワクチン)接種の費用補助制度もあるため、ホームページなどで確認してみましょう。
水痘(水ぼうそう)4,5)
妊娠中は重症化しやすいほか、妊娠20週までに感染すると先天性水痘症候群を発症する可能性があります。腕や足の形成不全、発達の遅れを含むさまざまな神経障害などを引き起こします。
麻しん(はしか)6,7)
妊娠中に感染すると、流産や早産を引き起こす恐れがあります。生涯で2回のワクチン接種が必要とされていますが、2000年4月1日以前に生まれた人では2回目の接種を受けている人が少なく、免疫を十分持っていない可能性があります。
ムンプス(おたふくかぜ)1,8)
妊娠初期に感染すると流産の原因になります。一方、胎児の奇形につながる可能性は低いとされています。
婦人科で詳しい健康診断を
婦人科で「ブライダルチェック」最近では「プレコンセプションチェック」とも呼ばれる詳しい健康診断を受けるのもおすすめです。
子宮や卵巣の状態を確認する
- 超音波検査
- 性感染症
- 抗体価
- 不妊に関わるホルモン
を調べる血液検査など、妊娠・出産に関わる項目がセットになっています。
- 骨密度
- 子宮頸がん
- 乳がん検診
などを含むものもあります。
夫婦で受けられるプランでは、男性も
- 抗体価
- 精子の質
- 男性ホルモン
- 性感染症
などをチェックできます。検査項目や価格は医療機関によってさまざまです。健康保険の適用外となる検査ですが、自治体によっては助成を受けられる場合もあります。
参考:東京都の不妊検査等助成事業
ご夫婦で1回。最大5万円を助成しています。
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/kosodate/josei/funinkensa/gaiyou.html
妊活に影響する病気や異常がないかを知り、あった場合は早めに治療を行うことで、健康な妊娠・出産への準備を行いましょう。
通いたい病院を探すのもおすすめ
通いたい病院をあらかじめ探しておくと、妊娠したときや妊活について相談したいときにスムーズに受診できます。
妊娠・出産に関わる病院には、
- 妊婦や出産・産後を診療する「産科」
- 不妊や女性特有の疾患を診療する「婦人科」
- 両方を取り扱う「産婦人科」
の3つの診療科があります。分娩を扱っているか、不妊治療を行っているかなど、病院ごとに診療科目や内容をよく確認することが大切です。
また、不妊治療や妊婦健診では頻繁に通院する必要があるため、家や職場からのアクセスも重要です。
- 診療時間や曜日
- 駅からの距離
- 送迎バスの有無
なども確認するとよいでしょう。
その他、
- 女性医師がいる
- 助産師の相談外来がある
- 小児科医がいて産後も通える
- 母子同室や母乳育児を勧めている
など病院によって特徴はさまざまです。自分自身の希望や出産に対する価値観を明確にし、各病院の特徴を比較してみましょう。
受診したい病院が見つかったら、まずは抗体検査やブライダルチェックを受けてみるのもおすすめです。
妊娠前に歯を治療しよう!
むし歯や歯周病などの歯のトラブルがある人は、妊娠前に治療を受けることが大切です。
妊娠によって女性ホルモンが急激に増えると、「プレボテラ・インターメディア」という歯周病菌が増えやすくなります。また、唾液の粘性が高まることで、口の中の自浄作用が低下し、歯ぐきの炎症や出血が起こりやすくなります。
さらにつわりで歯みがきが難しくなる、食べ物の好みが変わる、食事回数が増えるなどの変化が起き、口腔環境が悪化しむし歯や歯周病のリスクが高くなります。9)
また歯周病の病原細菌や、産生される物質が血流に乗って胎盤や子宮に影響し、早産や低体重児出産につながる可能性も示されています。10)
むし歯や歯周病のさらなる悪化や胎児への影響を防ぐため、今できる治療は妊娠前に済ませておきましょう。また、妊娠中も気づかないうちにむし歯や歯周病が悪化している可能性があるため、妊娠後はつわりがおさまる4~5ヶ月頃に歯科検診を受けるのがおすすめです。
備えあれば憂いなし!
妊活前に身体ついてチェックしておくことで、不安なく妊活や妊娠・出産に臨むことができます。今後思いがけないことが起こる可能性もありますが、診療が受けられる病院や費用の助成制度などを知っておくことで、速やかに対応ができるでしょう。
ご自身の安心のために、事前のチェックをおすすめします。
1) 一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会「こどもとおとなのワクチンサイト 妊娠可能年齢の女性と妊婦のワクチン」
https://www.vaccine4all.jp/topics_I-detail.php?tid=50
2) 内閣府「政府広報オンライン 妊娠を希望する女性や家族・職場の人も。生まれてくる赤ちゃんのために、風しんの予防接種を!」
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201406/3.html
3) 一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会「こどもとおとなのワクチンサイト 風しん(三日はしか)について」
https://www.vaccine4all.jp/topics_I-detail.php?tid=46
https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-sp/2256-related-articles/related-articles-404/4010-dj4044.html
5) 一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会「こどもとおとなのワクチンサイト 水ぼうそう(水痘)について」
https://www.vaccine4all.jp/topics_I-detail.php?tid=32
6) 厚生労働省「こどもとおとなのワクチンサイト 水ぼうそう(水痘)について」
7)一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会「こどもとおとなのワクチンサイト 年齢で見る不足している可能性があるワクチン(キャッチアップスケジュール)」
https://www.vaccine4all.jp/topics_I-detail.php?tid=48
8)一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会「こどもとおとなのワクチンサイト 年齢で見る不足している可能性があるワクチン(キャッチアップスケジュール)」
https://www.vaccine4all.jp/topics_I-detail.php?tid=15
9) 公益社団法人日本歯科医師会「歯とお口のことなら何でもわかるテーマパーク8020 妊娠時の歯やお口のケア」
https://www.jda.or.jp/park/prevent/ninsinji.html
10) 坂本治美ら. 妊娠期の歯周状態と低体重児出産のリスクに関する観察研究. 口腔衛生学会雑誌 66:322-327, 2016
三樹彩夏
小児科・内科クリニックに勤務後、2020年にフリーランスに転身。「健康的な生活を当たり前にする」をモットーに、ダイエットサポートやライター業を通して食の大切さを伝えている。