妊活にたんぱく質!必要な量と取り入れ方を管理栄養士が伝授
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24日。妊娠しやすい体作りには、体の原料となるたんぱく質の摂取が欠かせません。妊娠後のためにも今からたんぱく質を意識してとりたいところですが、何をどれくらい食べれば1日に必要な量がとれるでしょうか。この記事では、たんぱく質の必要量とたんぱく質を多く含む食材、1日の組み合わせ方を解説します。忙しくて手軽に食事を済ませがちな人でもできる、簡単にたんぱく質摂取を増やすコツも紹介します。
たんぱく質とは
20種類のアミノ酸が多数つながって作られている物質です。筋肉をはじめ、臓器や骨、皮膚、髪など、体のさまざまな組織を構成する主な原料となります。また、体の働きを調節する酵素やホルモン、神経伝達物質やビタミンの一種もたんぱく質をもとに作られています。体を作り、健康に維持するために欠かせない栄養素です。
体に含まれるたんぱく質は、常に合成と分解を繰り返し、新しく作り替えられています。分解された分の一部は尿から排泄されるため、失われた分を食事からの補充する必要があります。1)
妊活にとってのたんぱく質
卵子や精子もたんぱく質を主原料に作られます。女性・男性ともたんぱく質を十分にとることで、妊娠しやすい体作りにつながります。
さらに妊娠後もたんぱく質の摂取は欠かせません。胎児の体や胎盤もたんぱく質から作られるため、妊娠後は非妊娠時よりも多くのたんぱく質摂取が必要になります1)。妊娠後にも備え、妊娠前の段階からたんぱく質摂取を意識しましょう。
以下のような食事は、たんぱく質が不足しやすいパターンです。
- おにぎりやパンだけで食事を済ませる
- カップ麺などのインスタント食品が多い
- 1日3食とっていない
このような食事ではエネルギー(カロリー)自体も不足しやすく、やせにもつながります。やせ型では女性ホルモンの分泌が低下し、排卵障害を引き起こす恐れがあります2)。また妊娠後は胎児の発達が遅れる、将来の病気の発症につながるなどの可能性もあります。3)
次の項目でたんぱく質の多い食材を把握し、日々の食事に加えてみましょう。
たんぱく質を多く含む食材
ここでは、主なたんぱく質源となる食品を紹介します。
肉類
鶏肉・豚肉・牛肉とも、100gで約15~20gのたんぱく質が含まれています。種類や部位によって含まれるたんぱく質の量や他の栄養素が異なります。どれかひとつに偏らず、さまざまな種類を取り入れるのがおすすめです。
・鶏肉
豚肉・牛肉に比べて低脂質です。カロリーを抑えたいときや、さっぱりした味わいを求めるときに選ぶとよいでしょう。
・豚肉
ビタミンB1が豊富に含まれます。炭水化物をエネルギーに変えるときに必要な栄養素で、疲労の回復にも役立つとされています。
・牛肉
特に赤身肉では鉄が多く含まれます。鉄の十分な摂取は排卵を助け、妊娠しやすい体作りにつながります。また胎児に酸素を供給する働きや、発育に必要なエネルギーを作り出すのを助ける働きがあることから、妊娠中にも大切な栄養素です。4)
魚介類
魚も肉類と同様に、100gあたり約15~20gのタンパク質を含みます。
また魚類に特有の栄養素として、脂質の一種であるDHA・EPAが含まれます。血液中の中性脂肪やコレステロールを低下させる働きがあり、動脈硬化などの将来の病気を予防に役立ちます。1)また炎症を抑える働きがあることから、生理痛の軽減にも効果が期待されている栄養素です。魚を食べる頻度の高い女性では、生理痛が少ないことも知られています。5)6)
魚は大きく白身魚と赤身魚に分けられ、含まれる栄養素の種類が異なります。
・白身魚
たら、たい、さけなどの魚です。脂質が少なく、低カロリーで消化によい食材です。
・赤身魚
まぐろなどの赤身魚にはDHA・EPA、鉄が多く含まれます。さばやいわし、ぶりなどの青魚も赤身魚に分類されます。
・その他の魚介類
えび、いか、たこにもたんぱく質が含まれ、低脂質なたんぱく源として活用できます。
魚の中には、水銀を多く含むものがあります。妊娠中は胎盤を通して胎児に影響を与える可能性があることから、魚の種類と量には注意が必要です。ただし胎盤ができるのは妊娠4ヶ月後ごろであるため、妊娠に気づいたときから注意すれば間に合うと考えられています。
妊活中や妊娠後の水銀の影響については、こちらの記事で詳しく解説しています。気になる方はぜひチェックしてみてください。
卵
卵1個(50g)には5.7gのたんぱく質が含まれます。7)またほとんどのビタミン・ミネラルを含むことから、「完全栄養食品」ともいわれる栄養価の高い食品です。
卵にはコレステロールも多く含まれるため、卵を食べると血液中のコレステロール値が上がるのではないかと心配な人もいるかもしれません。確かに食べすぎは悪影響を及ぼす可能性がありますが、健康な人では血中のコレステロール値を調節する機能も働いているため、食べた分だけ必ずコレステロール値が上がるというわけではありません。卵を1日1個程度までの摂取であれば、健康に影響しないとの研究結果が複数発表されています。1)
乳製品
牛乳1杯(200g)に6.0g、ヨーグルト1食分(100g)に3.3g、スライスチーズ1枚(20g)に4.3gのたんぱく質が含まれます。7)ギリシャヨーグルトなど高たんぱく質タイプの商品では、1食で10~15gのたんぱく質を含むものもあります。
食事や間食にプラスすることで、たんぱく質を補うのに役立てるとよいでしょう。
大豆製品
これまで紹介した食材と異なり、植物性たんぱく質を摂取できる貴重な食材です。植物性たんぱく質を多くとる人では、少ない人よりも不妊症のリスクが低いことが知られています。4)肉や魚だけでなく、納豆や豆腐などの大豆製品からもたんぱく質を取り入れましょう。
主な大豆製品に含まれるたんぱく質の量は、絹ごし豆腐小パック1個(150g)では6.7g、納豆1パック(50g)に7.3g、豆乳1パック(200g)に6.8gです。7)また、最近では大豆たんぱくを肉のような味わいに加工した「大豆ミート」が注目されています。肉より低脂質でありながら、たんぱく質は同程度の量を摂取できます。
プロテイン商品
たんぱく質の補給を目的とした商品で、乳たんぱく(カゼイン・ホエイ)や大豆たんぱくが原料です。
飲料タイプ、バータイプ、スナックタイプなど様々な種類が市販されています。含まれるタンパク質の量も10g~25g程度までさまざまです。
食欲がない、食事の時間がとれないなどたんぱく質摂取が不足する場合、不足量や取り入れやすさに合わせて選ぶとよいでしょう。
どれくらい食べたらいい?
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、成人女性のたんぱく質の摂取推奨量は1日50gとされています。1)この量を満たすため、1食あたり20g前後のたんぱく質摂取が必要です。
肉類や魚類では、1食分80~100g(手のひら大)でたんぱく質およそ15gに相当します。1食分に手のひら大1つを目安に取り入れましょう。
豆腐や納豆、豆乳、牛乳、卵には1食分でおよそ6gのたんぱく質が含まれます。組み合わせて食べるか、間食に取り入れて不足分を補うのもよいでしょう。
また、ご飯、パン、麺類などの主食もたんぱく質を含みます。例として、ご飯1杯(180g)に3.6g、食パン1枚(60g)に4.4g、うどん1玉(ゆで100g)に4.6gのたんぱく質が含まれています。たんぱく質の必要量を満たすためには、たんぱく質がとれるメインのおかずだけでなく、主食も合わせて食べることも大切です。
▼3食の組み合わせ例 ()内はたんぱく質量7)
- 朝:食パン1枚(4.4g)、卵1個(5.7g)、牛乳1杯(6.0g)計16.1g
- 昼:うどん1玉(4.6g)、生80g(13.6g)計18.2g
- 夜:ご飯1杯(3.6g)焼き鮭1切れ(19.0g)計22.6g
合計:56.9g
たんぱく質を上手にとるには?
たんぱく質を1食20gとりたいとは思っていても、忙しくて料理や食事に時間がかけられない、食欲がなく手軽に済ませてしまうなどの理由から、実行するのは難しいと感じる人もいるかもしれません。その場合でも、手軽に取り入れられる食材を活用することで、今よりもたんぱく質の摂取を増やせます。
ここでは、たんぱく質を上手に取り入れ、簡単に摂取量を増やすコツを紹介します。
主菜を意識する
簡単に食べられるおにぎりやパン、カップ麺のみの食事では、たんぱく質が不足し炭水化物に偏りがちです。1品は肉、魚、卵、大豆製品がメインのおかずである「主菜」を取り入れましょう。
コンビニの場合はおかずが入ったお弁当を選ぶか、サラダチキン、豆腐バー、焼き魚、ゆで卵などのおかずをおにぎりやパンと一緒に食べるのがおすすめです。栄養成分表示を参考に、たんぱく質の量が20g前後になるよう組み合わせるとよいでしょう。
食事にちょい足しする
しらすや桜えび、ツナ缶、蒸し大豆などを常備しておき、ご飯やサラダ、スープなどにちょい足しすると手軽にたんぱく質量が増やせます。特に乾物や缶詰は常温で長く保存できるため、ストックしておくと安心です。その他チーズや魚肉ソーセージの買い置き、ゆで卵の作り置きもおすすめです。
高たんぱく質の商品を活用する
工夫しても食事からとり切れない場合は、プロテインやギリシャヨーグルトなどたんぱく質を強化した食品を利用するのも手です。
たんぱく質の含有量をチェックし、1食15~20gのたんぱく質がとれるように調整しましょう。また鉄やビタミンなど、女性にうれしい栄養素が配合されている商品もあるため、活用するとよいでしょう。
ダイエット中でもたんぱく質は重要?
妊活と合わせてダイエットし、体重を減らしたい人もいるかもしれません。しかしその場合でも、たんぱく質は推奨量の1日50gをとることをおすすめします。
この量は、体から失われたたんぱく質を補充するために必要な量です。不足すると筋力や免疫力の低下など、全身の働きに影響する可能性があります。
ダイエット中に控えたいのは、たんぱく質より脂質です。脂質は1gあたり9kcalと、たんぱく質や炭水化物の2倍以上のカロリーを持っています。脂質の多い食べ物や、揚げ物や炒め物などの油を多く使ったおかずを選ぶと、カロリーオーバーにつながりやすくなります。
肉の中では特にバラ肉やベーコン、ソーセージに脂質が多く含まれます。魚はトロやハラスなどの白い脂の多いものは控えめにしましょう。
これらの食材をヒレ肉やモモ肉、鶏肉、白身魚に代えると、低脂質・低カロリーに抑えられます。サバやブリなどの青魚は白身魚と比べるとカロリーが高いですが、必須脂肪酸のDHA・EPAを摂取できるため、過剰に避けずに取り入れたい食材です。
また、調理法は揚げる・炒める以外に、煮る・焼く・蒸すといった油を使わない調理法も取り入れましょう。
たんぱく質のとりすぎにも注意
たんぱく質は不足だけでなく、とりすぎても体に悪影響を及ぼします。
たんぱく質を過剰に摂取すると、不要な分を排泄するために腎臓に負荷がかかります。また、とりすぎたタンパク質の一部は十分に消化されないまま腸へたどり着き、腸内に棲む悪玉菌のエサになり腸内環境のバランスを乱します。
さらに、妊活にも影響する可能性があります。たんぱく質摂取量が多い女性(平均1日115g摂取)では、少ない女性(1日平均77g)に比べて排卵障害による不妊症のリスクが高かったという結果もあります。4)
たんぱく質は推奨量の1日50gを目安に、適量摂取を心がけましょう。
たんぱく質を十分にとり、妊娠に向けた健康な体づくりを!
たんぱく質は体のさまざまな臓器の原料となるほか、体の働きを整えるのにも欠かせません。妊活中はもちろん、妊娠後の胎児の発育にも必要な栄養素です。妊娠しやすい体作りのためには、肉・魚・卵・大豆製品・乳製品を偏りなく食生活に取り入れることが大切です。コンビニのおかずや缶詰、プロテインなど手軽な食品も活用し、1日50gの摂取を目指しましょう。
1)厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html
2)医療情報科学研究所「病気がみえる vol.9 婦人科・乳腺外科 第3版」メディックメディア(2016)
3)厚生労働省「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針~妊娠前から、健康なからだづくりを~ 解説要項」https://www.mhlw.go.jp/content/000776926.pdf
4)ジョージ・E・チャヴァロ、ウォルター・C・ウィレット、パトリック・J・スケレット「妊娠しやすい食生活 ハーバード大学調査に基づく妊娠に近づく自然な方法」日本経済新聞出版社(2013)
5)Severity of Menstrual Pain Is Associated with Nutritional Intake and Lifestyle Habits. Healthcare 2023, 11(9):1289
6)エコチル調査宮城ユニットセンター「生理の痛みに魚の効果?産後に魚の接種頻度が多い女性は中程度以上の月経痛を有するリスクが低い」http://www.ec-muc.med.tohoku.ac.jp/press-20220826/
7)文部科学省「食品成分データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.pl
※妊活 魚の記事を掲載https://docs.google.com/document/d/1yzNl-sXPoORSfrJv5Yje4wIqI2DX-Z2H7MqFnWVAj84/edit
三樹彩夏
小児科・内科クリニックに勤務後、2020年にフリーランスに転身。「健康的な生活を当たり前にする」をモットーに、ダイエットサポートやライター業を通して食の大切さを伝えている。