着床や妊娠率に関わる!妊活で欠かせない栄養ビタミンD
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ビタミンDと妊活の関係はあまり知られていないかもしれませんが、実は妊娠のメカニズムに大きく関係しています。
妊活や不妊治療では、男女ともにビタミンDの十分な摂取が大切です。この記事ではビタミンDと妊活の関係や、妊娠期・授乳期のビタミンDの役割、摂取方法について解説します。妊活中からビタミンDの摂取を習慣づけ、妊娠に備えましょう。
妊活とビタミンDの関係
ビタミンDの主な働きは、腸からのカルシウムの吸収を促進し、健康な骨を維持することです。一方で、細胞の増殖や免疫機能など他の機能に関わっていることも知られており、1)子宮においてもこれらの働きを介して、妊娠の成立に関わっていると考えられています。2)
最近の研究では、ビタミンD不足が体外受精での妊娠率・出生率を低下させる可能性が示されています。3)また、男性では精子の運動率に関係していることが知られています。4)身体で起きていることは日々研究がなされており、まだ完全には解明されていない分もありますが、妊活にとってビタミンDは大きな役割を果たす栄養素であるといえるでしょう。
妊娠~授乳期にもビタミンDは大事!
ビタミンDは妊活中だけでなく、妊娠期や授乳期においても重要な栄養素です。ビタミンDが不足すると、妊娠高血圧症候群や切迫早産のリスクが高まる可能性が示唆されています。また、授乳期には母乳中のビタミンDが不足すると、乳児の骨が軟らかくなる「くる病」や、低カルシウム血症を引き起こす可能性があります。5)さらに、妊娠・授乳期は骨密度が低下しやすい時期です。妊娠中に骨が弱くなると、産後に骨粗鬆症による腰痛を引き起こすこともあります。6)母体と子ども両方の健康な骨の発達のために、妊娠期・授乳期においてもビタミンDの摂取を継続することが大切です。
ビタミンDは〇〇〇で作られる!
ビタミンDは食事から摂取することもできますが、紫外線に当たると体内でも作ることができます。しかし、1日にどれくらい日光を浴びれば十分な量のビタミンDを産生できるかは、季節や場所、天候、皮膚の状態によって変わるため、具体的な基準は設定されていません。
2013年に発表された国立環境研究所による研究結果では、札幌・つくば・那覇の3地点で、晴天の日に両手と顔を太陽光に当てた場合に、ビタミンDを体内で5.5μg生成するために必要な日照時間が発表されています。
5.5μgのビタミンD量を産生するのに必要な日照時間5)
地域 | 7月 9時 | 7月 12時 | 7月 15時 | 12月 9時 | 12月 12時 | 12月 15時 |
---|---|---|---|---|---|---|
札幌 | 7.4分 | 4.6分 | 13.3分 | 497.4分 | 76.4分 | 2741.7分 |
つくば | 5.9分 | 3.5分 | 10.1分 | 106.0分 | 22.4分 | 271.3分 |
那覇 | 8.8分 | 2.9分 | 5.3分 | 78.0分 | 7.5分 | 17.0分 |
緯度が高いほど、また夏より冬の方が、必要な日照時間は長くなっています。
さらに悪天候が続いた場合、室内で過ごすことが多い場合、日焼け対策をしすぎた場合は、ビタミンDの産生量はより少なくなります。シミやしわなどを防ぐためには紫外線の浴びすぎは良くありませんが、極度に避けることもビタミンD不足につながるといえるでしょう。
ビタミンDを摂るには?
日光浴
先ほど述べたように、ビタミンDは紫外線に当たることで生成されます。そのため日光浴が必要ですが、窓を通すと紫外線は減ってしまいます。室内ではなく屋外に出て日光を浴びるのがおすすめです。
近所への買い物は日光浴がてら歩いていき、腕や脚は日焼け止めを控えめに塗るなど適度に紫外線に当たると良いでしょう。夏場など紫外線が強い時は無理のない範囲で行いましょう。日光浴はビタミンDの生成だけでなく、眠気を誘導するホルモンである「メラトニン」の生成にも関わっています。日中に光を浴びると、夜間のメラトニン分泌が盛んになり、睡眠の質向上につながります。7)外に出て日に当たりながら散歩をしたり、自然に触れたりする機会は、妊活中の気分転換にも役立つでしょう。
食事
日本人の食事摂取基準では、成人におけるビタミンDの1日の摂取目安量は8.5μgと設定されています。この値は男女ともに同じ値で、妊娠・授乳期でも変わりません。日光浴から5μg程度のビタミンDが生成されることを前提に、健康維持を目指し実現可能な摂取量として設定されました。5)
ビタミンDが含まれる食品は限られており、野菜や穀物、豆、いも類にはほとんど含まれていません。特に多く含まれているのは、鮭やいわし、さんまなどの魚類です。骨ごと食べられる小魚や缶詰の魚では、カルシウムも合わせてとれるため、ビタミンDと合わせて骨の健康にさらに役立つでしょう。
また、干ししいたけやきくらげなどのきのこ類にもビタミンDが含まれます。きのこ類は天日干しすることによってビタミンDが増加します。調理前にもう一度日光に当てると、より多くのビタミンDが摂取できます。さらに、ビタミンDは脂溶性であるため、脂質とともに摂取することで吸収率が高まります。炒め物にして食べる、肉や魚と一緒に料理するなどの工夫もおすすめです。
その他、ヨーグルトなどビタミンDを強化した食品を活用するのもよいでしょう。
ビタミンDが多く含まれる食品8)
食品名 | 可食部100gあたりのビタミンD(μg) |
---|---|
いわし | 32.0 |
鮭 | 32.0 |
にしん | 22.0 |
うなぎ | 18.0 |
さんま | 16.0 |
かれい | 13.0 |
あじ | 8.9 |
めかじき | 8.8 |
ぶり | 8.0 |
さば | 5.1 |
きくらげ(乾燥) | 85.0 |
干ししいたけ | 17.0 |
まいたけ | 4.9 |
サプリメント
日光浴や食事からの摂取を増やすのが難しい場合や、室内にいることが多い人、緯度が高い地域に棲んでいる人、紫外線が少ない冬などは、サプリメントを活用するのも一手です。
不妊症の改善に必要なビタミンDの摂取量として明確な基準はありませんが、サプリメントのパッケージに書かれた1日の目安量に従って摂取するのがよいでしょう。過剰摂取は高カルシウム血症や、カルシウムが臓器に沈着することによる腎障害などのリスクがあります。サプリメントの飲み過ぎには注意しましょう。妊活中はビタミンDと合わせて、葉酸の摂取も重要です。両方が配合されたマルチビタミンのサプリメントを選ぶのもよいでしょう。
https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/17.html
2)Pooya Farhangnia, et al. Vitamin D and reproductive disorders: a comprehensive review with a focus on endometriosis. Reprod Health. 2024, 21(1):61.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC11064344/
3)Chenhao Xu, et al. Association Between Vitamin D Level and Clinical Outcomes of Assisted Reproductive Treatment: A Systematic Review and Dose-Response Meta-Analysis. Reprod Sci. 2024 May 22. Epub ahead of print.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38777949/
4)Gloria Calagna, et al. Vitamin D and Male Reproduction: Updated Evidence Based on Literature Review. Nutrient 2022, 14(16):3278
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html
6)日高三貴ら「妊娠後骨粗鬆症により多発椎体骨折をきたした2例」整形外科と災害外科,68(4), 656-660(2019)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai/68/4/68_656/_pdf
6)福田裕美「概日リズム調節における光と食事の影響に関する研究動向」日本生理人類学会誌24(1),1-7(2019)
三樹彩夏
小児科・内科クリニックに勤務後、2020年にフリーランスに転身。「健康的な生活を当たり前にする」をモットーに、ダイエットサポートやライター業を通して食の大切さを伝えている。