妊活中のカフェインは大丈夫?管理栄養士が徹底解説!
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コーヒーを妊活中に飲んでも大丈夫なのか、不安に思っていませんか?仕事中のコーヒーが欠かせないけれど、カフェインの影響が気になるという人もいることでしょう。この記事では、妊活中におけるカフェインの摂取量の目安と、カフェインを減らすためにおすすめの飲み物を解説します。
妊活中、カフェインはどれくらい摂っていい?
妊活中のカフェイン摂取は1日500㎎未満、コーヒー3~4杯分までに留めましょう。
1日500mgを超えてカフェインを摂取していた女性では、カフェイン摂取が少ない女性と比べて妊娠までにかかる時間が延びたという調査結果があります。
ヨーロッパ5カ国の女性3,187人を対象に、妊娠までにかかる期間をカフェインの摂取量別に調査した結果、摂取量が多いほど期間が長くなる傾向がみられました。カフェイン摂取が1日100mg以下の女性では平均6.5カ月だったのに対し、1日に500mgを超えて摂取する女性では8.9カ月で、2.4カ月長くなっていました。また喫煙者では、カフェイン摂取によって妊娠が遅れるリスクが大きいことも示されています。1)
一方で、カフェイン摂取と妊娠までの待ち時間には関係がないという報告もあり、研究結果は一致していません。複数の研究結果をまとめて分析した結果では、カフェインの摂取量と妊娠しやすさや不妊治療の成功率には関係がみられませんでした。2)また、体外受精や顕微授精の妊娠率、出生率とも関連しないという分析結果も示されています。3)
これらの結果から、妊活中だからといってカフェイン摂取を過度に避ける必要はないといえます。ただし、カフェインの摂り過ぎは健康に悪影響を及ぼすため注意が必要です。
カフェインは神経を興奮させるため、適量摂取によって頭を冴えさせ、眠気覚ましに役立つ成分です。一方、過剰摂取するとめまい、興奮、震え、不眠を引き起こします。また、胃腸を刺激することで下痢や吐き気にもつながります。さらに長期的な影響として、肝機能が低下した人で高血圧のリスクを高める可能性があることが示されています。またカルシウム摂取量が少ない人では、カルシウムの排出を促し骨粗鬆症の原因になる可能性があるともいわれています。4)
妊活中かどうかに関わらず、健康被害を避けるため、カフェインを過剰に摂らないよう心がけましょう。
カフェインの適量はどれくらい?
カフェインによる健康への悪影響を防ぐため、国際機関などにおいて注意喚起がされています。カナダ保健省(HC)では、健康な成人でカフェインは1日400 mg(コーヒーをマグカップで約3杯)までにするよう呼びかけています。
ただし、カフェインは身体に及ぼす影響の個人差が大きく、健康への影響を正確に評価することが難しい成分です。そのため、一生涯摂取し続けても健康に悪影響が生じないと推定される量は設定されていません。5)
研究結果から、妊活中は1日500㎎未満(コーヒー3~4杯)を意識しましょう。コーヒー以外にも、お茶やエナジードリンク、栄養ドリンクなどにもカフェインが含まれます。飲み物に含まれるカフェインの量を把握して、摂取量を調整してみましょう。
飲み物に含まれるカフェインの量5)
食品名 |
カフェイン濃度 |
---|---|
カフェインを多く添加した清涼飲料水 (いわゆるエナジードリンク) |
32 ~300 mg/100 mL (製品によって異なる) |
インスタントコーヒー(顆粒製品) |
80 mg/1杯(2 g) |
コーヒー(浸出液) |
60 mg/100 mL |
紅茶(浸出液) |
30 mg/100 mL |
せん茶(浸出液) |
20 mg/100 mL |
ほうじ茶(浸出液) |
20 mg/100 mL |
ウーロン茶(浸出液) |
20 mg/100 mL |
玄米茶(浸出液) |
10 mg/100 mL |
特に、カフェインが配合されているエナジードリンクや眠気覚まし用のドリンクには、コーヒーやお茶よりも高濃度でカフェインが含まれています。缶や瓶1本当たりでコーヒー2杯分に相当するカフェインが含まれるものもあります。5)知らず知らずのうちにカフェインの過剰摂取を引き起こしやすいため、注意が必要です。
また、エナジードリンクには砂糖も多く含まれています。砂糖が多い飲み物を摂取することは、血糖値を急激に変化させることで排卵障害を引き起こしやすくなり、妊娠しにくくなることが知られています。6)カフェインの影響と合わせ、エナジードリンクは妊活中には控えたい飲み物です。
また、カフェインを含むお茶は紅茶や緑茶だけでなく、ウーロン茶やジャスミン茶、ほうじ茶、玄米茶も該当します。特に機能性表示食品など「濃い」ことをうたったお茶の飲料では、他の飲料よりカフェインが多い傾向があります。7)
コーヒーやカフェインを含むお茶は飲みすぎに注意し、眠気を覚ましたいときに限って飲むのがおすすめです。気分転換やリラックスのために飲みたい場合は、ノンカフェイン飲料も取り入れましょう。
妊娠後は要注意!
カフェインは胎児の発育を妨げることが知られている成分です。妊娠中にカフェインを摂り過ぎると、早産や低体重での出生を引き起こし、将来の健康リスクを高める可能性があります。また、流産につながるおそれも指摘されています。4)
世界保健機関(WHO)は、1日のカフェイン摂取量が 300 mgを超える妊婦に対して、妊娠中はカフェイン摂取量を制限するように注意喚起しています。
また英国食品基準庁(FSA)では、妊娠した女性に対して1日200mg(コーヒーをマグカップで2杯程度)と、さらに厳しい制限を勧めています。4)
欧州食品安全機関(EFSA)が2015年に公表したカフェインの安全性に対する科学的意見書では、習慣的な摂取量が1日200mg以下であれば胎児への健康リスクはないと記載されています。また授乳中の女性では、1回当たり200mg以下、習慣的な摂取量が1日200mg以下であれば健康リスクは生じないとしています。4)
妊娠後~授乳中であってもコーヒーを飲むことに問題はありませんが、妊娠前よりは少ない量が推奨されているため注意が必要です。妊娠したときに備え、妊娠前からカフェインの量を意識しておきましょう。
妊活中からおすすめのノンカフェイン飲料は?
麦茶
麦茶の原料は大麦で、カフェインは含まれていません。妊活中の女性はもちろん、妊産婦も安心して飲めるお茶です。ティーパックをやかんで煮出すか冷水で水出しするだけでなく、最近はペットボトルの飲料も多数売られており、コンビニや自販機でも手に入る気軽さも魅力です。
また麦茶の種類のひとつに、はと麦を使用した「はと麦茶」もあります。はと麦茶も一般の麦茶と同様にノンカフェインで、妊活~妊娠中まで問題なく摂取できる飲み物です。インターネット上で、はと麦茶が流産や早産を招くと話題になったことがありますが、そのような根拠はありません。8)
ごぼう茶
ごぼう茶は、カットしたごぼうを焙煎して作られたお茶です。イヌリンとフラクトオリゴ糖などの食物繊維や、クロロゲン酸などのポリフェノールが含まれているのが特徴です。9)
食物繊維は腸内細菌のエサになり、便通を改善する働きがある栄養素です。また血糖やコレステロールの上昇を抑え、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクを減らすことも知られています。10)
ポリフェノールは抗酸化作用を持ち、体内で発生した活性酸素を消去する働きがあります。活性酸素が大量に生成されると、動脈硬化や老化、免疫機能などの低下につながります。ポリフェノールは体を活性酸素の害から守るのに役立つ成分です。11)
ごぼうにはもともとポリフェノールが含まれていますが、焙煎することで抗酸化力が強くなるともいわれており9)、ごぼう茶の健康効果が期待されています。
ただし、妊娠後はポリフェノールの摂り過ぎに注意が必要です。特に妊娠後期では、ポリフェノール過剰摂取によって胎児の動脈管早期収縮が起こり、心不全を引き起こす可能性があります。12)
飲み過ぎは避け、他のノンカフェイン飲料も取り入れるのがおすすめです。
たんぽぽ茶、たんぽぽコーヒー
たんぽぽ茶とは、たんぽぽの根を乾燥・粉砕して煮出したものです。コーヒーに近い苦味が特徴で、たんぽぽコーヒーとも呼ばれています。コーヒーが飲みたいときの代わりの飲み物として活用できます。
たんぽぽは利尿作用や感染症、胃腸の症状に良いとされていますが、健康効果についての明確な根拠もほとんどありません。
安全性については、通常量を摂取した場合は問題ないと考えられています。ただし、ブタクサ、キク、マリーゴールド、デイジーなど、タンポポに近い植物にアレルギーがある人は、タンポポにもアレルギー反応を起こす可能性が高いため注意が必要です。13)
ハーブティーには要注意!
ハーブティーはノンカフェインのため、コーヒーやお茶の代わりとして人気のある飲み物です。ハーブは自然のものだから安心と思われがちですが、安全性が確認されていない成分や、医薬品成分として規制されている植物や成分もあるため、特に妊娠中には注意が必要です。また、授乳中の女性が摂取した場合、成分が母乳に移行し乳児に影響する可能性も示されています。14)
種類によっては子宮を刺激し、流産を誘発する作用があるハーブティーもあります。代表的なものは、カモミール、アロエ、ジュニパーベリー(セイヨウネズ)、ペニーロイヤル、センナ葉などです。これらは妊娠したら摂取を避けましょう。
一方、かんきつ類の果皮やしょうが、ローズヒップなどは、1日2~3杯の適量摂取であればおそらく安全と考えられています。14)
ハーブティーを選ぶ際は、妊娠中も飲めるものかどうか、商品パッケージなどをよく確認しましょう。
男性にカフェインの影響はある?
カフェインの摂取量が男性の精子の質に与える影響は明確になっていません。
カフェインが精子のDNAを損傷させ、精子の質に悪影響を及ぼす可能性があると考えられています。実際に、カフェイン摂取によって不妊治療による出生率が低下したというデータもあります。15)しかし、精子の質や妊娠期間に与える影響についての研究結果は一致していません。16)
さらなる研究が待たれるところですが、カフェインによる健康被害を避けるためにも摂り過ぎは控えましょう。
恐れ過ぎず、適度に楽しもう!
妊活中でもコーヒー3~4杯程度の摂取であれば、カフェインが妊娠しやすさに大きく影響することはないと考えられます。それ以上の摂取は、めまいや不眠、高血圧などの健康被害を避けるためにも勧められません。妊娠後から授乳中は子どもの発育のためにカフェインをコーヒー2杯程度に控えることが推奨されています。とはいえ、コーヒーをまったく飲んではいけないわけではありません。一部はカフェインレスの飲み物に置き換えて量を調整しながら、適度に楽しみましょう。
参考文献
1)F Bolúmar, et al. Caffeine intake and delayed conception: a European multicenter study on infertility and subfecundity. European Study Group on Infertility Subfecundity. Am J Epidemiol. 1997, 145(4):324-34
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9054236/
2)Julie Lyngsø, et al. Association between coffee or caffeine consumption and fecundity and fertility: a systematic review and dose-response meta-analysis. Clin Epidemiol. 2017, 9:699-719
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29276412/
3)F Bolúmar, et al. The association between caffeine and alcohol consumption and IVF/ICSI outcomes: A systematic review and dose-response meta-analysis. Acta Obstet Gynecol Scand. 2022, 101(12):1351-1363
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36259227/
https://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/factsheets_caffeine.pdf
5)厚生労働省「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170477.html
6)ジョージ・E・チャヴァロ、ウォルター・C・ウィレット、パトリック・J・スケレット「妊娠しやすい食生活 ハーバード大学調査に基づく妊娠に近づく自然な方法」日本経済新聞出版社(2013)
7)国民生活センター「飲料のカフェイン含有量に関する調査‐知らずに多く摂取していることも!?‐」
https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20211104_3.pdf
8)鈴木信孝.妊娠中のハトムギ使用について.日本補完代替医療学会誌2018,15(2):141-151
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcam/15/2/15_141/_article/-char/ja/
9)井上 淳詞ら「抗酸化指標ORAC値が増大した「ごぼう」の焙煎」平成21年度日本調理科学会大会発表要旨集
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ajscs/21/0/21_0_1086/_article/-char/ja/
10)厚生労働省「e-ヘルスネット 食物繊維の必要性と健康」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-001.html
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-009.html
12)林直哉ら.妊産婦におけるポリフェノールの摂取状況.Trace Nutrients Research 2021, 38:14-17
http://www.jtnrs.com/sym38/14.pdf
https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c04/14.html
14)国立健康・栄養研究所「「健康食品」の安全性・有効性情報 妊娠中のハーブ製品の自己判断による摂取に注意」
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail3009.html
15)AE Karmon, et al. Male caffeine and alcohol intake in relation to semen parameters and in vitro fertilization outcomes among fertility patients. Andrology 2017, 5(2):354-361
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28187518/
16)Elena Ricci, et al. Coffee and caffeine intake and male infertility: a systematic review. Nutr J. 2017, 16(1):37
三樹彩夏
小児科・内科クリニックに勤務後、2020年にフリーランスに転身。「健康的な生活を当たり前にする」をモットーに、ダイエットサポートやライター業を通して食の大切さを伝えている。