リスクがあるので知っておきたい!妊娠中の鳥(オウム、インコ、ハトなど)との接し方
- 妊活
妊娠中は、新しい命の誕生を待つ幸せな時間ですが、この大切な期間には予想外のリスクも潜んでいます。あまり知られていませんが、妊娠中の女性が鳥と接触する事で、母体と赤ちゃんへ重大な影響を与えてしまう事もあるのです。
この記事では鳥類における感染症の基礎知識から予防策、実際の症例を通して、妊娠中に鳥と安全に接するための情報をお届けします。
どうして?妊娠中に鳥は飼っちゃいけないの?
ペットとして鳥を飼っている人のなかには、身近な方々へ妊娠を報告した際に「妊婦は鳥を飼ってはいけない」と、言われた経験がある方もいるかもしれません。そういった傾向は特に年配の方に強くでるようです。
もしかして、その理由は、実際に日本であった、妊婦が鳥類における感染症「妊娠オウム病」で死亡した悲しい症例の影響かも知れません。
オウム病とは?
「オウム病」という病名を耳にしたことがありますか?オウム病とは、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)が原因の人獣共通感染症です。
主に鳥(オウム、インコ、ハトなど)のほか(ウシ、ヒツジ、ヤギなど)が感染し、人間にも感染する病気なのです。空気中に浮遊する乾燥した糞を吸い込んだり、餌の口移しをする事で、人間にも感染するとされています。
日本では発症者は少なく、全国で年間20~30例ほどです。
軽い場合には咳だけなど、風邪のような症状で済む場合もありますが、重症化すると呼吸困難や意識障害、最悪の場合は死亡するケースもあります。日本では2017年に初めて、妊婦がオウム病に感染して死亡したケースが報告されています。1)
オウム病は、抗生物質での治療が可能ですが、免疫力が低下している妊婦は感染しやすく、重症化しやすいので注意が必要です。できる限り、感染予防に努めましょう。
オウムやインコの元気がない?健康状態チェックの方法
鳥類がオウム病に感染した場合、以下のような症状が現れます。
- 元気がない、さえずりもなくなり、目を閉じて羽を逆立ててふくらんでいる
- 下痢症状(軟便、白色水様便、緑白色便、血が混じった便)などいつもと異なる便をする
- 脚と翼が震える、麻痺している
- 食欲がない、水を飲む量が減る
これらの症状が現われた場合は、かかりつけの動物病院で診てもらいましょう。まずは、鳥類の健康状態の異常に、早く気づくことが重要です。
飼育時の注意点
ペットとのふれあいは楽しい時間ですが、妊娠中は、接触方法に気を付けることが大切です。可能であれば、妊娠期間中は、同居の家族にトイレ掃除を担当してもらい、鳥のトイレとの接触を避けましょう。
自身で行う場合は
- 汚物処理の際はマスクおよび手袋を使用する
- 乾燥した糞便を吸い込まないよう注意する
- 汚物処理後はすぐに手を洗う
これらの点に注意してください。また、日常でのふれあい時も「口移しで餌をあげない」「過度なスキンシップを控える」など、感染防止を意識してください。
妊娠オウム病の悲しい体験談
日本での症例が少ないと言われる妊娠オウム病ですが、2023年には、日本で3例目の死亡事故も出てしまいました。症状の始まりは「頭痛がする」から。その後、日常でよくある「なんか風邪っぽい」といったような症状が続き、その後は日に日に熱が上がり、お腹の赤ちゃんと共に命を失ってしまったそうです。
残された家族は「二度と同じ思いをする家族が出てきてほしくありません。1人でも多くの方に届きますように」と、SNS等での発信を続けています。「妊娠オウム病」という病気は、日本では発症者は少ない事もあり、まだ広く知られていません。
過剰に心配する必要はありませんが、病気の存在を知り、正しい行動で感染を防ぎましょう。
厚生労働省から日本医師会への通知
厚生労働省は、日本における妊婦の死亡事例に関する重要な情報を平成29年3月に提供しております。特に、妊娠24週の妊婦がオウム病(Chlamydophila psittaci)に感染し、多臓器不全により死亡したケースが報告されています。
検査により、肺、脾臓、肝臓、胎盤から病原体が同定されました。この病原体は主に鳥類から人への感染が知られており、妊婦は感染リスクが高いため、接触を避けることが推奨されています。
都市伝説としての病気ではなく、日本では年間20件から30件程度の感染事例が判明しているとのことです。鳥が健康であることを日々確認し、異常が見られた場合はすぐに獣医師に相談することが大切です。健康な鳥は感染症のリスクが低くなります。
また、鳥に適切な食事を与え、ストレスの少ない環境を提供することで、鳥の健康を維持し、病気の発生を抑えるよう努めてください。
愛鳥との大切な時間
小鳥は、仕草や鳴き声が本当にかわいいですよね。お喋りしてくれる種類なら、思わぬ言葉を覚えて笑わせてくれることもありますし、飼い主を励ましてくれる事もあります。
種類によっては、とても長生きしてくれる鳥もいます。オカメインコなどは、20年以上共に生きてくれる事もありますし、ギネス世界記録でも、イギリスのセキセイインコが29年も長生きした実績が認められています。
子ども時代から共に過ごした愛鳥と、妊娠・出産を一緒に経験し、また自身の子どもと共に過ごす。そんな素敵な経験を愛鳥とできるなら、それは本当に幸せな事です。
最後に
死亡症例もあるオウム病ですが、気をつけてお世話することで、感染は十分に防ぐことが可能です。環境・健康に気を配りながら、妊娠・出産後も、大切な家族の一員である愛鳥との暮らしを楽しんでくださいね。生まれてくる赤ちゃんとも、ぜひ、この豊かさを分かち合ってください。