不妊治療をおこなうと双子を授かる?知っておきたい多胎妊娠の理由とリスク対策
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不妊治療を受けることで、双子や三つ子といった「多胎妊娠」の確率が自然妊娠よりも高くなることをご存じですか?日本では、自然妊娠における双胎妊娠の確率が150〜160組に1組とされているのに対し、不妊治療を受けた場合、その確率は約80〜90組に1組まで増加すると言われています。
この記事では、不妊治療が多胎妊娠のリスクを高める理由や具体的な影響、そしてリスク軽減のための対策について解説します。
不妊治療が多胎妊娠を引き起こす理由
不妊治療において多胎妊娠のリスクが高まる主な理由は、治療方法そのものにあります。特に以下の2つの方法が多胎妊娠を引き起こしやすいとされています。
排卵誘発剤の使用
不妊治療では、卵巣を刺激して複数の卵胞を同時に成熟させる排卵誘発剤がよく使用されます。これにより、同時に複数の卵子が排卵され、双子や三つ子などの多胎妊娠が起こる確率が高くなるのです。
体外受精(IVF)と胚移植
体外受精では、受精卵を体外で培養し、その後子宮に移植します。以前は妊娠率を高めるために複数の胚を移植するのが一般的でしたが、これが多胎妊娠の大きな原因となっていました。現在では「単一胚移植」が推奨されており、リスクを軽減する努力が進められています。1)
多胎妊娠のリスク
多胎妊娠は母体と胎児の双方にとってさまざまなリスクを伴います。不妊治療を検討する際には、これらのリスクを正確に理解することが重要です。
早産のリスク
多胎妊娠では、早産の可能性が高くなります。統計によると、36週未満での早産率は45〜50%に上るとされています。早産は胎児の健康に大きな影響を与える可能性があるため、医療機関での管理が必要不可欠です。
妊娠高血圧症候群
多胎妊娠では妊娠高血圧症候群のリスクも高まります。特に双胎妊娠では約10%弱の確率でこの症状が発生し、母体と胎児の健康を脅かす可能性があります。
双胎間輸血症候群(TTTS)
一部の双胎妊娠では、胎盤を共有する場合に双胎間輸血症候群(TTTS)という特有のリスクが発生します。この状態では、一方の胎児が過剰に血液を受け取り、もう一方が不足するという不均衡が起こり、専門的な医療ケアが必要となります。
多胎妊娠を予防するための対策
単一胚移植の採用
多胎妊娠を防ぐためには、体外受精において単一胚移植を選択することが推奨されています。単一胚移植では移植する胚を1つに限定し、多胎妊娠のリスクを大幅に軽減することができます。
排卵誘発の慎重な管理
排卵誘発剤の使用量や方法を慎重に調整することも、多胎妊娠を予防するために重要です。医師によるホルモン値の管理や定期的な超音波検査が不可欠です。
多胎妊娠では帝王切開の選択肢が生まれる理由
多胎妊娠は、双子や三つ子など複数の胎児を同時に妊娠する状態を指します。このような妊娠では、母体や胎児にかかる負担が大きくなるため、分娩方法として帝王切開が選択されるケースが一般的です。ここでは、多胎妊娠で帝王切開が推奨される理由やそのメリット、注意点について解説します。
自然分娩が難しいケースが多い
自然分娩は、一人の胎児を出産する場合に最も一般的な方法です。しかし、多胎妊娠では以下のような理由から自然分娩が難しいとされています。
- 胎児の位置が正常(頭位)でないことが多い。
- 二人以上の胎児がいる場合、分娩時に胎児同士が干渉するリスクがある。
- 出産に伴う母体への負担が大きくなる。
特に、双子の片方が横向きや逆子の状態(骨盤位)である場合、自然分娩は母体や胎児にとってリスクが高いとされます。このような理由から、多胎妊娠では帝王切開が推奨されることが多いのです。
多胎妊娠で帝王切開を選択することには、以下のようなメリットがあります。
- 母体と胎児の安全性の向上:分娩時のトラブルを回避し、計画的な出産が可能となります。
- 迅速な対応:胎児の状態が急変した場合にも迅速に対応できます。
- 医療スタッフの準備が整う:帝王切開は計画的に行われるため、必要な医療機器やスタッフが事前に準備されます。
多胎妊娠における分娩方法の選択は、妊婦の健康状態や胎児の成長・位置などを総合的に判断して決定されます。帝王切開が必ずしも唯一の選択肢ではありませんが、安全な分娩を目指すためには、医師との密なコミュニケーションが欠かせません。
また、出産を控えた母親は、事前に帝王切開に関する知識を深めることも大切です。医療スタッフに疑問や不安を積極的に相談し、自分に最適な分娩方法を選択しましょう。
多胎妊娠での出産は一般的な出産よりも注意が必要ですが、医療の進歩により、安全性が確保された分娩方法が提供されています。帝王切開もその一つであり、母体と胎児の健康を守るための大切な選択肢です。
産前産後休業と母体を守る制度
多胎妊娠や不妊治療による妊娠では、通常よりも母体への負担が大きくなることがあります。そこで活用したいのが「産前産後休業」です。2)
産前休業は出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は14週間前)から取得可能で、産後休業は出産翌日から8週間の間、母体を休めるために法律で定められた制度です。
この休業期間中、健康保険から「出産手当金」が支給されることもあり、収入の途絶えた期間の経済的支援として役立ちます。
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産前・産後ヘルパー派遣事業
多胎妊娠や高リスク妊娠では、妊娠中や出産後の生活において特別なサポートが必要になる場合があります。そこで利用できるのが「産前・産後ヘルパー派遣事業」です。
この制度では、専門のヘルパーが妊娠中や産後に家事や育児のサポートを提供し、母体の負担を軽減します。自治体によっては、費用の一部が助成されることもありますので、積極的に活用しましょう。
あなたはどのタイプ?ライフスタイルに合わせて宅配コースを決めよう
不妊治療は、新たな命を授かるための大きな希望です。しかし、治療に伴うリスクを正しく理解し、適切なサポートを受けることが重要です。特に多胎妊娠のリスクを軽減するためには、医療機関や自治体の制度を積極的に活用することが推奨されます。
この記事が、より安心して妊娠・出産を迎えるための一助となれば幸いです。
1) 公益社団法人日本産科婦人科学会「ARTデータブック2020年版」