妊活中にプロテインは飲んでもいい?管理栄養士がポイントを解説
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妊活中は食生活も気になるものです。たんぱく質が十分にとれているか、プロテインは必要なのか、どの商品を選んだらよいのかなど、迷う人も多いことでしょう。
プロテインは目的や食生活の状況によって、適した商品や取り入れ方が異なります。
今回の記事では、プロテインが必要な人の特徴や、商品選びのポイントを詳しく解説します。取り入れ方も紹介しますので、適切な活用方法を学んで、妊活中の体づくりに役立ててください。
妊活にプロテインは必要?
「プロテイン」は英語でたんぱく質を意味する言葉です。日本では主に、たんぱく質を強化した飲料や食品を「プロテイン」と呼んでいます。
たんぱく質は体のあらゆる組織を構成する主な成分で、筋肉がその代表例です。その他、内臓や皮膚、髪、爪などの組織もたんぱく質からできています。さらに、体内の代謝に関わる酵素やホルモン、免疫機能を司る抗体、酸素を全身に運ぶヘモグロビンの構成成分としても重要な役割を果たしています。1)
胎児のもととなる卵子や精子も主な原料はたんぱく質であり、妊活中も十分に摂取したい栄養素です。
たんぱく質は通常、肉や魚、大豆製品、卵、乳製品などから摂取できます。ただし、極端なダイエットや偏った食生活をしている場合は、たんぱく質の摂取量が不足することもあります。そのような場合はプロテインで補うことも一つの選択肢となります。
バランスの取れた食事を心がけつつ、たんぱく質を十分に摂取できるよう必要に応じてプロテインを活用するとよいでしょう。
必要なのはどんな人?
プロテインは、たんぱく質の摂取量が足りない人におすすめです。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」2)で設定された成人女性の1日のたんぱく質摂取の推奨量は50gです。この量は、体に含まれるたんぱく質量を維持するための量として設定されています。
この量のたんぱく質は、例えば朝食に卵と牛乳、昼食に肉100g、夕食に魚を1切れ食べることで達成できます。食品に含まれるたんぱく質量の目安は、肉100gや魚1切れに約20g、卵1個や納豆1パック、牛乳1杯に約6gです。3)
しかし、朝食を抜く、おにぎりや麺類だけで済ませる、お菓子を食事代わりにするなど、食生活が偏っている場合はたんぱく質が不足している可能性があります。4)
納豆や豆腐、ゆで卵、サラダチキンや牛乳・豆乳など、たんぱく質を手軽に取り入れられる食品を追加して、食事バランスを整えることで不足を補えます。ただし食べる時間がない、食欲がなく食べ切れないなどの場合は、プロテインを活用して補うとよいでしょう。
食事で十分たんぱく質を摂取できている場合は、無理にプロテインを使う必要はありません。たんぱく質の摂取量が多すぎると、腸で悪玉菌のエサになり腸内環境を乱す恐れがあります。まずは自分の食生活の内容を把握し、たんぱく質の摂取量を確認した上で、食事の改善やプロテインの利用を考えてみましょう。
選び方は?
プロテインを選ぶポイントはたんぱく質の量・原料・他に含まれる栄養素の3つです。それぞれ選び方を見ていきましょう。
たんぱく質の量
まずは、摂取1回分のプロテインに含まれるたんぱく質の量をチェックしてみましょう。商品によって10~25gと幅広いため、食生活や体調に合わせて選びましょう。
普段の食事で肉や魚をあまり食べない人など、たんぱく質摂取量が少ない場合は、食事1食分のたんぱく質として1回20g前後のものを選ぶとよいでしょう。一方、食事でたんぱく質をとっているが小食の人、間食として活用したい人は10g前後を目安にするのがおすすめです。
特に小食の人やお腹が弱い人は、一度に多量のたんぱく質をとると消化しきれない可能性があります。お腹の様子を見ながら少しずつ試していくことが大切です。
たんぱく質の原料
次に、たんぱく質の原料を見ていきます。主なプロテインの原料には、ホエイとソイの2種類があります。
ホエイプロテインは牛乳が原料で、乳脂肪やカゼインを取り除いて作られたものです。水に溶けやすく、体内に吸収されるスピードが速いのが特徴です。そのため、たんぱく質をすぐに補給したいトレーニング直後におすすめされるプロテインです。
ソイプロテインは大豆が原料です。摂取から吸収まで時間がかかり、ゆっくり吸収されるため腹持ちが良いのが特徴です。5)
このため、ダイエット中の食事の補助や間食代わりにとるのに適しています。ただし、ソイプロテインは水に溶けにくく、商品によっては粉っぽい舌触りが残ることもあります。
ホエイとソイのいずれも、体内では合成できない必須アミノ酸がバランスよく含まれています。どちらが良い・悪いと判断するのではなく、自分の目的や好みに合わせて選ぶとよいでしょう。
他に含まれる栄養素
最後に、プロテイン以外に含まれている栄養素に着目します。
多くのプロテイン製品は、たんぱく質源だけでなく、他の栄養素が配合されています。特に女性向けの商品には、不足がちな鉄やカルシウム、代謝に必要なビタミンB群が配合されているものが多く、中には妊活中に嬉しい葉酸入りのものもあります。
注意が必要なのは、筋肉を増やすことを目的に作られているプロテインです。これらの製品は、筋肉を含めた体重の増量を目的にしていることから、糖質も配合されていることがあります。普段の食事でご飯やパン、麺などから十分な糖質を摂取している人がこのようなプロテインを選んだ場合、糖質のとりすぎにつながる可能性があります。
プロテインには用途に合わせてさまざまな成分が配合されています。自分の目的に合ったものを選ぶためにも含有成分をよくチェックしてみましょう。
最近見かける「完全栄養食」って?
最近「完全栄養食」という言葉をよく目にするようになりました。
これは正式な名称ではありませんが、一般的には1食分に必要な栄養素をすべて摂取できるよう配合された食品のことです。厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」に基づいた種類や量の栄養素が含まれています。
プロテインはたんぱく質の摂取を主な目的として開発されたものですが、完全栄養食はたんぱく質に加え、糖質やビタミン、ミネラル、食物繊維などが幅広く含まれています。そのため、食事全体を置き換えたい場合や、栄養バランスの取れた食事を簡単にとりたい場合には完全栄養食が適しています。一方、おにぎりやパン、麺などから糖質はとれているものの、不足するたんぱく質を補いたい場合はプロテインが適しているといえます。
プロテインの取り入れ方は?いつ飲めばいい?
プロテインの取り入れ方に決まりはありません。「不足分を補う」という感覚で活用するとよいでしょう。
朝食をとる習慣がない方や、おにぎりやパンのみで済ませている人は、朝食のタイミングでとるのがおすすめです。昼食や夕食でも、肉や魚などのたんぱく質源を摂取できない場合、補助的に利用するのも一つの方法です。
また、間食代わりに取り入れるのも効果的です。自分の生活スタイルに合わせて、無理なく摂取できる方法を見つけてみましょう。
「プロテインは寝る前に飲むといい」といわれることもありますが、これは主に筋肉を増やすためのトレーニングをしている人向けの情報です。筋肉のたんぱく質は、常に合成と分解を繰り返していますが、就寝中は合成より分解に傾く時間帯です。寝る前にたんぱく質を摂取すると就寝中も筋肉の合成が促進されるため、この説が広まりました。5)
積極的に筋肉を増やすトレーニングを行っていない場合は、プロテインは本来食事をとるタイミングや間食のタイミングでとるのがおすすめです。
トレーニングをしている人ではたんぱく質の必要量も多いため、トレーニング直後や就寝前にもプロテインを摂取してたんぱく質を十分に補うとよいでしょう。
プロテインを妊活に活用しよう!
妊活中のプロテインは、食事からたんぱく質が十分に摂取できない場合の補助として有効です。まずは自身の食生活を見直し、たんぱく質量が不足しているか把握した上で、必要に応じてプロテインを取り入れてみましょう。
プロテインを選ぶ際は、たんぱく質の配合量や原料の種類、他に配合されている栄養素に注目し、普段の食習慣や生活スタイルに合ったものを選ぶことが大切です。食事や間食のタイミングで適度にプロテインを活用することでたんぱく質を十分に摂取し、健康的な体づくりを目指しましょう。
1)公益財団法人長寿科学振興財団「三大栄養素のたんぱく質の働きと1日の摂取量」
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/tanpaku-amino.html
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-003.html
三樹彩夏
小児科・内科クリニックに勤務後、2020年にフリーランスに転身。「健康的な生活を当たり前にする」をモットーに、ダイエットサポートやライター業を通して食の大切さを伝えている。